Featured topics 「宝」は活用してこそ「宝」

図1 歴代宝案が沖縄県立図書館へ移管されることを報じた新聞記事(昭和8年11月14日付『沖縄日報』 沖縄県立図書館所蔵「東恩納寛惇新聞切抜帳18」所収)

 「法ではなく宝ですよ」。私が初めて「れきだいほうあん」と入力しメールを送信した時、編集事務局から漢字変換ミスを指摘されてしまった。この史料は琉球王国の貴重な公文書の控えであり、沖縄の宝!だから、歴代「宝」案なんですよ、というコメントが今でも私の心に刺さっている。『歴代宝案』はその存在プロセス自体も「宝」級である。琉球王国の滅亡や関東大震災、沖縄戦という幾多の非常事態に合いながらも、先人たちの手によって保存・継承されてきた。『歴代宝案』を主役にした「旅行記」が描けるのではないかと思う程のスケールである。同時に、この『歴代宝案』を守ろう、残そうと奮闘した人々の思いや願いに迫り、歴史資料を保存・継承していくことの意義について学習する必要性を痛感した。

 令和3年7~9月にかけて、沖縄県内の県立高校地理歴史科・公民科の先生方へ「沖縄の歴史や文化を学ぶことについて」というアンケートを行った(回答者数245名)。集計結果、99%が「沖縄の高校生が沖縄の歴史や文化を学ぶことは有意義である」と回答している。そして、令和4年度高等学校入学生から歴史系科目は「歴史総合」「日本史探究」「世界史探究」という科目にリニューアルされる。(【地理歴史編】高等学校学習指導要領解説(平成30年告示)解説)。「暗記科目」視されがちな歴史系科目だが、今回の学習指導要領改訂では「主体的・対話的で深い学び」の場にするため歴史資料のさらなる活用が求められており、それは同時に歴史資料の活用の在り方を問うものでもある。特に、『歴代宝案』は「地域の歴史資料」という枠に収まらない、当時の中国や東南アジア諸国等の事情も読み取れる壮大な歴史資料である。つまり、沖縄県内の歴史教員にとっては、「地域史」としてだけではなく、アジア史まで扱える非常に魅力的な歴史資料なのである。

図2 台北帝国大学小葉田淳助教授(当時)による『歴代宝案』の学界発表を大きく報じた新聞記事(昭和10年5月30日付『大阪朝日新聞台湾版』)

 沖縄にはたくさんの「宝」がある。沖縄の子どもたちにはこの「宝」を誇りに思い、自分自身のあり方生き方を支えるものであって欲しい。そのためには、私たち教師がその宝の一つである歴史資料を保存・継承だけではなく、「活用」しなければならない。歴史資料は「活用あってこその保存」であり、地域社会の活性化へ寄与するものでもある。「歴史」は私たちが知って「歴史」になる。以前、ある生徒が琉球・沖縄史を学んだ感想としてこう記述していた。学校教育において、『歴代宝案』に埋もれているできごとを取り上げることは、生徒と共に「歴史」を積み上げていく醍醐味と言える。「宝」は活用してこそ「宝」。一緒に『歴代宝案』を授業で活用していきましょう!

我如古香奈子(沖縄県立総合教育センター 指導主事)