2-197-05　琉球国中山王世子尚泰より、琉球漂着の中国難民張万興・陸載岩等の送還のための護送船派遣に当たり、関係当局へ便宜供与要請のため、都通事鄭学楷等に付した執照（咸豊五《一八五五》、三、十五）
琉球国中山王世子尚（泰）、護照を給発して以て関津に憑らしめ、以て難人を送る事の為にす。
照らし得たるに、咸豊四年十二月十六日、福建難人の張万興等有りて、海防分府の護照を奉じて京米を領装し、海船一隻に坐駕して天津府に到り、京米を運収して転じて山東に到りて貿易し、本籍に回らんとするに、洋中、風に遭いて本国属の葉壁山の洋面に飄入し、礁に擱りて撃砕せらる。淹斃するの一名を除くの外、現に在るの二十四名は、該地方官、収養して中山の牧港地方に送り到る。
咸豊四年十二月初九日、又、江南蘇州府崇明県の難人陸載岩等、共に一十一名有り。海船一隻に坐駕し、山東萊陽県に到りて棉花・棉布等の件を発売し、菜油・花生・麦麪等の件を置買し、本籍に回らんとするに、洋中、風に遭いて本国属の大島の洋面に飄入し、浅に就きて撃破せらる。該地方官、収養して中山の牧港地方に送り到る。当即に均しく飭して例に照らして館に発り、安挿して廩餼・衣服等の項を給与し、部文内に旨を奉じたるの事理に欽遵し、収養して解送せしめんとす。特に都通事の鄭学楷等を遣わし、海船一隻に坐駕し、梢役共に六十七員名を率領し、難人の張万興等二十四名併びに陸載岩等一十一名を護送し、前みて閩省に至らしむ。
所有の差去せる員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に、王府の礼字第三百九号半印勘合の執照一道を給発して都通事の鄭学楷等に付し、収執して前去せしむ。如し経過の関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して遅滞するを得る毋からしめよ。
須らく執照に至るべき者なり。
計開す。
風を被るの福建福寧府福安県の難人
船主の張万興　　出海の張慶彬
耆舵の林徳水　　水手の呉開彬
呉開春　　呉朝燦　　陳開聚
劉長星　　劉国龍　　陳洪柱
陳興元　　王六魚　　劉清明
張加申　　王清官　　蘇発長
林祥豊　　鄭福官　　黄益真
鄭性春　　林進太
興化府莆田県の難人
水手の黄元元　　陳修仁
泉州府同安県の難人
水手の呉鳳
以上、共に二十四名なり。
風を被るの江南蘇州府崇明県の難人
船主の陸載岩　　水手の王永坤
兪順華　　朱茂元　　龔毛郎
王大宝　　姚二宝　　劉月和
陸福生　　朱貴松　　陳廷楊
以上、共計するに一十一名なり。
護送都通事一員　　鄭学楷　人伴四名
司養贍大使一員　　毛成美　人伴四名
管船夥長・直庫二名　鄭上治　内汝楫
水梢共に五十五名
右の執照は都通事鄭学楷等に付す。此れに准ぜられよ
咸豊五年（一八五五）三月十五日

注（1）毛成美　咸豊五年の司養贍大使。伊野波里之子親雲上盛郁。この護送船の司養贍大使を『世譜』では官舎と記す。『球陽』咸豊二年の記事（一九三六条）はロバート・バウン号事件について記したものだが、中国人苦力の八重山漂着の第一報を聞いた王府は、毛成美・鄭徳潤等を派遣し、事案の処理にあたらせている。
（2）鄭上治　咸豊五年の管船夥長。
（3）内汝楫　咸豊五年の管船直庫。