2-194-13　琉球国中山王世子尚泰より、八重山漂着の中国人苦力陳昌などを搭載した護送船の派遣に当たり、関係当局へ便宜供与要請のため、都通事王家錦等に付した護照（執照）（咸豊三《一八五三》、八、十五）
琉球国中山王世子尚（泰）、護照を給発して以て関津に憑らしめ、以て難人を送る事の為にす。
照らし得たるに、福建の民人陳昌等三百八十名は、咸豊二年二月十九日に於て本国属島の八重山に漂収す。郷を離るること日久しく、情、実に憐れむべし。
応に即ちに聖祖仁皇帝の諭旨を欽遵し、早きに及んで護送して閩に到らしむべし。但だ、該難人は𠸄夷と船に在りて互いに人命を傷つけ、巨衅多端あり。若し遽かに該難人を将て内地に護送したれば、誠に恐るらくは、𠸄船再た来たりて訪拿せんとするも踪無ければ、勢い必ず怒を発し罪を示さん。
業経に福建布政使司に咨請し、妥為く査辦せしめ、両院に転詳し、敝国より船を撥して護送し、以て事無きを得さしむ。随いで情に拠りて査辦し、例に照らして護送するを示覆せらるるを蒙りて案に在り。
茲に経に報じたるところの、先後して拿え回りたる難人八十名、鎗斃・縊死するもの六名、病故するもの二十三名を除き、又、大疫流行し先後して身故する者九十二名、縊死する者四名を除くの外、現に在るの一百七十五名は、海船二隻に分駕して解送せんとして、特に都通事の王家錦等を遣わし、海船一隻に坐駕し、梢役共に六十七員名を率領し、難人陳昌等七十名を護送して前みて閩省に至らしめんとす。
所有の差去せる員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に、王府の礼字第三百五号半印勘合の執照一道を給発して都通事の王家錦等に付し、収執して前去せしむ。如し経過する関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して遅滞するを得る毋からしめよ。
須らく執照に至るべき者なり。
計開す。
福建省泉州府晋江県人
陳昌　 郭従 　洪包　李近　王塔　陳知　王銭　林遠　
胡花　 林什 　洪才　林向　呉胡　謝長　盧紅　張才　
王故　 施保 　蔡有　陳炎　劉旦　張遇　陳朗　呉海　
王茅　　丁春来　許水　陳明　景遠　黄瑞　黄彙　王堂　
姜尾　　李蛋 　呉安　許樑　蔡浮　呉荐　許好　黄振　
柯渓　　陳丕　荘智　 荘抵 　李到　潘捷　陳行　呉𢭩
王瑞　　林欉　王恕　黄春山　陳圭　黄道　施変　黄利
施敬　　許益　李桃　 曾麻 　施在
泉州府恵安県人
黄白　　鄭成　柯機　陳魁　陳渋　林味
泉州府安渓県人
李寄　曾栄　林約
以上、共計するに七十名
護送都通事一員　　王家錦　人伴四名
司養贍大使一員　　毛成憲　人伴四名
管船夥長・直庫二名　　王述勃　高承福
水梢共に五十五名
右の執照は都通事王家錦等に付す。此れに准ぜられよ
咸豊三年（一八五三）八月十五日

注（1）毛成憲　乾隆五十九～咸豊八年（一七九四～一八五八）。上里親雲上盛詳。首里系毛氏十四世。咸豊三年に司養贍大使、六年に在船使者を務める。道光二十三年、喜屋武間切上里地頭職に任じられる（『家譜（三）』七〇五頁）。
（2） 王述勃　嘉慶四年（一七九九）～？。上運天里之子親雲上。久米村系王氏（上運天家）九世。道光五年、読書習礼のため福建に赴く（『家譜（二）』二一頁）。『宝案』では咸豊三年（巻一九四）、八年（巻二〇〇）の管船火長、同治三年の結状では中議大夫（第三集巻一〇）として名がみえる。
（3）高承福　咸豊三年の管船直庫。