2-164-02　世子尚育の、中国難民護送のため都通事鄭元偉等に付した執照（道光十七《一八三七》、二、□）
琉球国中山王世子尚（育）、護照を給発して以て関津に憑し、以て難人を送る事の為にす。
照得するに、道光十六年十二月十六日、広東省潮州府澄海県の難人陳進利等共に五十名、海船一隻に坐駕し、天津府に到りて貿易し、転じて山東省福山県に到りて、黄豆・小麦・豆餅等の貨を採買して本籍に回らんと要むるに、洋中風に遭い、本国の山北府属金武郡の洋面に飄入し、礁に衝りて損壊する有り。該地方官、急ぎ小船数隻を撥りて、拯援活命して収養し、送りて中山の泊村に到らしむ。業経に例に照らして館に発りて安挿し、廩餼・蚊帳等の項を給与す。部文内の奉ぜる旨の事理に欽遵し、収養して解送せしめんとす。茲に都通事鄭元偉等を遣わし、海船一隻に坐駕して梢役共に六十七員名を率領し、難人陳進利等五十名を護送して、前みて閩省に至らしむ。
所有の差去せる員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に王府、礼字第二百六十五号の半印勘合の執照一道を給発して都通事鄭元偉等に付し、収執して前去せしむ。如し経過の関津及び沿海巡哨の官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して遅滞するを得る毋からしめよ。須らく執照に至るべき者なり。
計開　難人の名数
船戸　陳進利　　　舵工　陳発財
水手　杜利　　　林欣　　　□和
　金元　　　陳茶　　　孫成
　呉月　　　林江　　　陳部
　蔡脩　　　鄭恭　　　許好
　陳合利　　黄州　　　黄田
　陳順　　　林平　　　馮五
　杜財　　　余発　　　黄万
　李金　　　陳元宝　　李寔
　呉吉　　　金日　　　李定
　周元　　　陳亨　　　金銀
　林才　　　林合先　　鄭之
　李巳　　　王士　　　陳冊
　余未　　　陳勝
搭客　陳福　　　李合　　　林和
　陳利　　　鄭禄　　　黄意
　李光　　　呉忠　　　林拱
　陳生
以上、共計五十名
護送都通事一員　鄭元偉　人伴四名
司養贍大使一員　馬執中　人伴四名
管船夥長・直庫二名　魏思恭　長得福
水梢共に五十五名
右の執照は都通事鄭元偉等に付し、此れを准けしむ
道光十七年（一八三七）二月　　日

注（1）飄入　漂流して入港する。
（2）拯援活命　救助して命を助ける。
（3）司養贍大使　養贍は養育する、扶養するの意。漂着した中国人を護送する職務である。
（4）長得福　道光十七年の難民護送船、十八年・二十年の進貢船の管船直庫。