2-80-10　国王尚穆の、接貢のため都通事阮成善等を派遣するむねの執照（乾隆五十八《一七九三》、十一、三）
琉球国中山王尚（穆）、勅書を恭迎し併びに使臣を接回する事の為にす。
照得するに、本爵、業に乾隆五十七年冬に於て貢使の紫巾官毛国棟・正議大夫毛廷柱等を遣わし、表章・方物を齎捧し、天朝に入貢す。経に本爵、福建等処承宣布政使司に移咨し、起送して京に赴き聖禧を叩祝して案に在り。茲に還国の期に当たれば、例として応に船を撥して接回すべし。此れが為に特に都通事阮成善等を遣わし、梢役共に八十五員名を帯領し、海船一隻に坐駕し前みて福建に至り、皇上の勅書・欽賞の幣帛を恭迎し、併びに京回の使臣毛国棟・毛廷柱・鄭文英を接り、在閩の存留通事梁煥等と与に還国せんとす。
但だ差する所の員役は、文憑無ければ、以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に王府、礼字第一百四十七号の半印勘合執照一道を給発し、存留通事鄭国鼎等に付し、収執して前去せしむ。凡そ所の関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して阻滞するを得ること毋からしめよ。須らく執照に至るべき者なり。
計開
在船都通事一員　阮成善　　　　　跟伴四名
在船使者二員　　向天祥／馬振威　跟伴八名
存留通事一員　　鄭国鼎　　　　　跟伴六名
管船夥長・直庫二名　□克秀・昂□基
水梢共に六十一名
右の執照は存留通事鄭国鼎等に付し、比れを准けしむ
乾隆五十八年（一七九三）十一月初三日

注（1）表章　皇帝へ差し出す表文や奏文。校訂本は「表彰」だが「台湾本」は「表章」。
（2）特　校訂本は「将」だが「特」の誤りか。
（3）半印勘合執照　琉球よりの使節であることを証明するための割り印を付した執照。執照は琉球国王が外国に出航する船に対して発給した証明書。
（4）向天祥　乾隆五十・五十八年の在船使者。
（5）馬振威　乾隆五十八年の在船使者。
（6）存　校訂本は「在」だが「存」の誤りか。
（7）鄭国鼎　仲嶺親雲上。『宝案』では乾隆五十八年に存留通事、嘉慶三年の具結状では中議大夫、五年の進貢では都通事、九年の進貢では正議大夫として名がみえる。
（8）□克秀　阮克秀か。一七五五～一八〇八年（乾隆二十～嘉慶十三）。乾隆四十二～四十七年読書習礼のため福州に滞在。五十四年漢文組立役となる。五十八年接貢船の火長として中国に渡る（阮氏家譜）。
（9）昂□基　昂永基か。一七四五～一八〇六年。山田筑登之親雲上憲興。那覇系昂氏二世。乾隆五十四年接貢船の佐事、五十八年、六十年、嘉慶二年、四年と直庫（船頭）を務め、嘉慶五年福州で没。乾隆六十年の接貢船直庫のときに海賊に遭遇して撃退したことへの褒賞や昇進を記す「言上写」などが家譜に記されており、この件では都通事以下直庫まで昇進したことがわかる。昂永基は浦添間切又吉の名島をもらい、以後、又吉親雲上と称した（『家譜（四）』二一五頁）。