2-51-22　琉球国中山王尚穆の、乾隆三十三年の進貢のため、都通事毛景成等に付した符文（乾隆三十三《一七六八》、十二、七）
琉球国中山王尚（穆）、進貢の事の為にす。
照らし得たるに、本爵、世天朝の洪恩に沐し、会典に遵依して二年一貢し、欽遵して案に在り。
茲に乾隆三十三年の貢期に当たれば、特に耳目官毛徳儀・正議大夫毛維基・都通事毛景成等を遣わし、表章を齎捧し、梢役共に二百を過ぎざるの員名を率領し海船二隻に坐駕せしめ、常貢の煎熟硫黄一万二千六百觔・紅銅三千觔・煉熟白剛錫一千觔を将て均しく分装して両船に載せしむ。一船の礼字第九十五号には硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・白剛錫五百觔を装運し、一船の礼字第九十六号には硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・白剛錫五百觔を載運し、前みて福建等処承宣布政使司に至りて投納し、起送して京に赴き叩きて聖禧を祝らしめんとす。
所有の差去せる員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。合行しく符文を給発すべし。今、王府の礼字第九十四号半印勘合の符文一道を給し、都通事毛景成等に附し、収執して前去せしむ。如し経過の関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して遅悞するを得る毋からしめよ。
須らく符文に至るべき者なり。
計開す
正使耳目官一員　　　毛徳儀　　　　　人伴一十二名
副使正議大夫一員　　毛維基　　　　　人伴一十二名
朝京都通事一員　　毛景成　　　　　人伴七名
在船都通事二員　王国鳳／蔡煕　　　　　　人伴八名
在船使者四員　　向克寛　隆得譲／翁彦愽　敖良佐　人伴一十六名
存留通事一員　　　梁廷枢　　　　　人伴六名
在船通事一員　　　紅秉健　　　　　人伴四名
管船火長・直庫四名　金堅　仲秉直／紅之謙　厚成業
水梢共に一百二十名
右の符文は都通事毛景成等に付し、此れを准けしむ
乾隆三十三年（一七六八）十二月初七日

注（1）常貢　通常の進貢品。明代には馬・螺殻・硫黄が主要な貢物だったが、清代の康煕年間は硫黄・紅銅・白剛錫が常貢となった。
（2）分装　（荷物などを）分割して積載する。
（3）王国鳳　久米村系王氏六世。国場親雲上（『王姓家譜　支流　大田家』世系図）。乾隆三十三年の在船都通事。
（4）蔡煕　志多伯親雲上（『楊姓家譜　元祖古波蔵筑登之』、楊文元の譜）。乾隆三十三年の在船都通事。『宝案』では乾隆二十二年の存留通事（巻四〇）、三十七年の朝京都通事（巻五七）としても名がみえる。
（5）向克寛　乾隆三十三年の在船使者。
（6）隆得譲　高原親雲上元宣（『家譜（三）』六二〇頁、麻眞岑の譜）。乾隆三十三年の在船使者。『宝案』では乾隆三十七年の在船使者（巻五七）としても名がみえる。
（7）翁彦愽　乾隆三十三年の在船使者。『宝案』では乾隆二十八年（巻四六）の在船使者としても名がみえる。
（8）敖良佐　乾隆三十三年の在船使者。
（9）六　校訂本は「肆（四）」だが次の執照では人伴は八名となっており、あわせて十六名となるので「六」とした。
（10）梁廷枢　乾隆三十三年の存留通事。『宝案』では乾隆四十三年の朝京都通事（巻六四）としても名がみえる。
（11）紅秉健　康煕六十～乾隆四十四年（一七二一～七九）。久米村系紅氏（和宇慶家）十二世。伊指川若秀才。乾隆二十二年勢頭座敷、二十六年座敷へ陞る。乾隆十三年に勤学として福州に赴く。乾隆二十六年に協辦文組役（文組寄役）兼述作総師役となる。乾隆三十三年に進貢二号船脇通事（在船通事）となり中国に赴く（『家譜（二）』二〇九頁）。
（12）金堅　乾隆元年（一七三六）～？。久米村系金氏（具志堅家）十二世。具志堅里之子親雲上。乾隆五十五年中議大夫に陞る。乾隆三十三年の総管、五十五年、嘉慶三年の在船都通事として中国に赴く。嘉慶四年中国からの帰途行方不明となる（『家譜（二）』六二頁）。
（13）仲秉直　乾隆三十三年の管船直庫。『宝案』では乾隆三十五年、三十七年の管船直庫（巻五四・五七）としても名がみえる。
（14）紅之謙　東恩納親雲上（『家譜（二）』二一一頁、紅成章の譜）。乾隆三十三年の管船火長。『宝案』では乾隆四十九年、五十三年の在船通事（巻七一・七五）としても名がみえる。
（15）厚成業　乾隆三十三年の管船直庫。『宝案』では乾隆三十五年、三十七年、三十九年の管船直庫（巻五四・五七・六〇）としても名がみえる。