1-27-17　国王尚貞の、進貢と官生の帰国に謝恩するため耳目官馬廷器等を遣わす符文（一六九二、一〇、二五）
琉球国中山王尚（貞）、進貢兼謝恩の事の為にす。
照得するに、敝国、旨の両年一貢を奉じ敢えて期を愆えず。査するに、向例として貢する毎に官を遣わし、海船二隻に坐駕して熟硫黄・紅銅・海螺殻等の物を装載して福建に前至し、布政使司に投納し、起送して京に赴かしむるは歴として定例有りて案に在り。
茲に康煕三十一年（一六九二）、貢に当るの期に、部咨を接読するに内に開すらく、琉球国、航海して入貢するに途遠く労煩す。海螺殻は嗣後進ずるを免ず、と。聖恩浩蕩なれば敢えて欽遵せざらんや。今、貢期に際し旨に遵いて海螺殻の進ずるを免ぜらるるを除く外、旧例に仍照して虔んで熟硫黄一万二千六百斤・紅銅三千斤を貢し、另に改めて煉熟白剛錫一千斤を貢し、更に官生梁成楫等、旨を奉じて帰国すれば、謝恩の土儀の嫩熟蕉布一百匹・囲屛紙五千張を附解す。特に耳目官馬廷器・正議大夫王可法・都通事鄭士綸等を遣わし、海船二隻に坐駕して官伴・水梢を率領せしむ。毎船に均幇する上下の員役は共に二百員名を過ぎず。前項の貢物は二船に分載す。一船義字第五十三号は熟硫黄四千斤・紅銅一千五百斤・煉熟白剛錫五百斤・嫩熟蕉布一百匹・囲屛紙五千張を装運し、一船義字第五十四号は熟硫黄八千六百斤・紅銅一千五百斤・煉熟白剛錫五百斤を装運す。・福建布政使司に前至して投納し、起送して京に赴き、併せて表章を齎捧して聖禧を叩祝せしむ。
拠りて差去する員役は、並びに文憑無くば誠に所在の官軍の阻留して便ならざるを恐る。此の為に王府、今、義字第五十二号半印勘合符文を給して都通事鄭士綸等に付し、収執して前去せしむ。如し経過の関津及び沿海巡哨の官軍の験実に遇わば、即ち放行す可し。留難して遅悞するを得しむる毋れ。須らく符文に至るべき者なり。
計開　　赴京の
耳目官一員　馬廷器　人伴一十三名
正議大夫一員　王可法　人伴一十三名
都通事一員　鄭士綸　人伴六名
在船都通事二員　金世銘　林正茂　人伴八名
在船使者四員　翁宗璉　文克彩　明応信　仲則裕　人伴一十六名
存留通事一員　陳其洙　人伴六名
在船通事一員　毛文哲　人伴四名
管船火長・直庫四名　魏鸞　鄭元良　丙起才　衛法魯
右の符文は都通事鄭士綸等に付し、此れに准ぜしむ
康煕三十一年（一六九二）十月二十五日

注＊この進貢については『清実録』康煕三十二年九月丙寅の条に記事がある。
（1）部咨　〔〇六-二一〕。
（2）陳其洙　一六六七-九四年。幸喜通事親雲上。久米村陳姓（幸喜家）三世。福建で六年学ぶが、この時の通事を務めたのみで早逝した（『家譜（二）』四六〇頁）。
（3）魏鸞　一六七五-一七四五年。久米村魏姓（慶佐次家）五世。この後福建で学ぶこと三年、都通事を務め、中議大夫に陞る（『家譜（二）』三〇頁）。