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資料詳細
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- 資料名
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- 歴代宝案巻号
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- 差出
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- 文書形式
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- 書誌情報
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- 関連サイト情報
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- 訂正履歴
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- 備考
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テキスト
2-123-09 福建布政使司より国王尚灝あて、嘉慶二十一年の進貢・二十二年の接貢関連事項の処置、詞章の献呈等について知らせる咨(嘉慶二十三《一八一八》、五、四)
福建等処承宣布政使司、勅書を恭迎し、併びに使臣を接回せんが事の為にす。
貴国王の咨を准けたるに開す。
案照したるに、本爵は貢典に欽遵し、業に嘉慶二十一年秋に耳目官毛維憲・正議大夫蔡次九等を遣わし、表章・方物を齎捧して天朝に入貢せしむ。経に本爵、咨もて両院に転詳し、起送して入京し、聖禧を叩祝せしめられんことを請いて案に在り。
茲に還国の期に当たり、例として応に船を撥りて接回すべし。此れが為に特に都通事魏崇仁等を遣わし、海船一隻に坐駕し、前みて閩省に詣らしむ。皇上の勅書・欽賜の物件を恭迎し、併びに京回の使臣毛維憲・蔡次九・王士惇と在閩の存留通事鄭択中等を接えて帰国せしめんとす。仍お祈るらくは、督/撫両院に転詳し、皇上の遠人を懐柔するの至意に仰体せんことを。希わくは来船の員伴を将て例に照らして館駅に安頓し、事務の完竣するを俟ちて、来夏の早汛にて貢使等と同に均しく原船に坐駕せしめ、遣発して返棹するを准さるれば、則ち航海の末員、驚濤の虞を免るるを得るに庶からん。相い応に咨達して察照すべし、等の因あり。此れを准けたり。
又、特に檄もて探護せしめんが事の為にす。
嘉慶二十二年九月二十六日、兼署巡撫部院董(教増)の憲牌を奉けたるに、署閩安副将陳元標の報に拠るに称すらく、本年九月初七日、督部堂の憲檄を奉けたるに、元標に着令して本幫兵船を督帯して琉球の接貢夷船を探護し省に進ましめよ、等の因あり。此れを奉けたり。
当即に職、標両営の各汛弁並びに巡緝の幫船に分飭して、一体に留心し探護せしむるの外、茲に護左営都司張啓明の報に拠るに、署中軍守備陳登貴の報に拠るに、亭頭汛外委蔡長青の報に拠るに称すらく、切かに照らすに、琉球国の接貢夷船一隻、内に配せる通事蔡修、官伴・水梢と同に共に八十九員名は、本月十三日未の刻に四嶼洋面に寄泊す。経に定海汛把総陳忠義、十四日早潮に、護送して虎に進み、移交して接護して前来せり。
該外委、遵いて即ちに兵目を管帯し、船隻に駕坐し、小心に該夷船を防護す。午の刻に至りて、亭頭怡山江干に到りて抛泊す。理として合に具報すべし、等の情あり。転報して職に到る。此れを拠けたり。鎮口汛弁に飭行し、目兵を管帯して船隻に駕坐し、小心に防護して省に進ましめ、另に報ずるを除くの外、合に夷船の虎に進むの日期を将て具報すべし、等の情あり。本兼署撫部堂に到る。此れを拠けたり。
合に就ちに飭行せしむべし。牌を備えて司に行し、即便に福防庁に転行して査照せしめ、即ちに琉球の接貢夷船を将て、内港に帯進せしめ、営汛口員と会同して験明し、官伴人等は館駅に安頓し、例に照らして辦理し詳報せしむ。違う毋かれ、等の因あり。
又、前事の為にす。
嘉慶二十二年十月二十六日、総督部堂董(教増)の、本司の詳に批するを奉けたるに、査得したるに、琉球国王尚灝、都通事魏崇仁等を遣わし、官伴・水梢共に八十九員名を率領し、海船一隻に坐駕して閩に来たらしめ、勅書併びに進貢の使臣を迎接して回国せしめんとす。嘉慶二十二年九月十八日に南台の番船浦に駛抵して停泊す。署福州府海防同知言尚焜、福州城守営副将安慶・閩海関委員希霖布と会同するを経て、九月二十一日に人数併びに帯来せる土産・銀両・雑物及び防船の軍器を会験し、即ちに是の日に館駅に安挿す。分別に造冊し、抄白の符文・執照と同に詳送して前来す。合に就ちに清冊を転造して詳送し、伏して察照して具題するを候つべし。此の案は、応に撫憲の主稿を請うべし。合併声明す、等の由あり。
批を奉けたるに、撫部院の核題するを仰候せよ。繳す。冊・抄白の執照は存す、とあり。
又、巡撫部院史(致光)の批を奉けたるに、察核して具題するを仰候せよ。仍お督部堂の批示を候て。繳す。冊・抄照は存送す、等の因あり。此れを奉けたり。
又、恩を体例に籲む等の事の為にす。
嘉慶二十二年十月二十四日、総督部堂董(教増)の、本司の詳に批するを奉けたるに、査得したるに、琉球国の進・接貢船隻、閩に来たる。所帯の銀両は、例として応に開館し、該夷官の兌買交易するを聴すべし。惟だ査するに、史書・黒黄紫皁大花西番蓮緞疋・焰硝・牛角・兵器・桐油・鉄鍋・黄紅銅器以及び糸綢・緞疋・綾絹・紗羅等の物は、均しく例禁を干せば、収買するを許さず。
乾隆二十八年の間、諭旨を欽奉し、琉球国に其の土糸五千觔・二蚕湖糸三千觔の歳買を准さる。又、乾隆三十年の間、前憲の奏准を奉け、歳買せる糸觔八千觔の内、綢緞二千觔に改配せんとすれば、千觔毎に糸一千二百觔に抵扣し、数に按じて扣除せしむ、各等の因あり。欽遵して案に在り。
茲に該庁の詳に拠るに、該夷官の請うに拠るに、接貢船内に帯来せる土産の貨物を将て、給示して開館貿易せんことを呈請す。相い応に俯して請う所の如くし、即ちに期を定めて開館貿易せしめ、以て体恤を昭らかにすべし。
仍お飭して憲行を遵奉し、看管の員役に厳飭して留心に稽察し、開館の日より始めと為し、採買せる貨物を験明ならしめ、日に按じて摺報せしむ。仍お開館の日期を将て先行に通報せしむ。収買せる糸觔を紬緞に改配するに至りては、均しく定額に遵い配搭して扣抵し、其の余の氈条・布疋・薬材等の物で例禁の内に在らざる者は、応に買帯するを准すべし。把駅の員弁・兵役の陋規を需索するを許さず、附近の土棍・奸民の入館し勾通局騙し、禁物を串帯し、額を逾えて滋弊するを厳禁す。
併びに土通事をして交易せる客商の姓名・兌買せる物件を将て日に按じて摺報せしめ、事竣われば該庁に着令して細冊を彙造し、司に送り査考せしむ。并びに飭して夷官等に訳諭し、趕緊に貿易し期を剋して報竣せしめ、遣回するを詳請し、逗遛して貽悞するを許す毋からしむべし。仍お事竣わるの日を俟ちて、買う所の各項の貨物を将て、員に委して盤験して上船せしめ、以て透漏を杜ざさしむ。給示して柔遠駅に寔貼して暁諭するを除くの外、理として合に詳報すべし。伏して察核して批示するを候つ、等の由あり。
批を奉けたるに、詳の如く飭遵せよ。仍お撫部院の批示を候て。繳す、とあり。
又、巡撫部院史(致光)の批を奉けたるに、詳に拠り已に悉くせり。給示して暁諭するを仰候せよ。仍お歴届の章程に照らし、分別に飭遵して辦理し、先に開館の日期を将て報査せしめよ。并びに趕緊に貿易せしめ、竣報して期に至れば、遣回するを詳請せよ。仍お督部堂の批示を候て。繳す、等の因あり、此れを奉けたり。
又、通行せんが事の為にす。
嘉慶二十二年四月十八日、前兼署総督部堂王(紹蘭)の箚付を奉けたるに、嘉慶二十二年四月初九日、礼部の咨を准けたり。
儀制司案呈す。嘉慶二十二年二月二十三日、内閣の抄出したるに、二十一日、上諭を奉じたるに、国家、向きに旬慶の大典に遇い、鑾輅の時巡に或う。臣工等、例として詞章を呈献するを得る。明年、朕、盛京を巡幸し祗んで三陵に謁す。歳を越えての己卯、朕、周甲の旬慶に届る。諸臣は雍容揄揚し、合に諸れ天保頌君の義にして、原より以て下情に達して盛典を光かすべし。但だ呈進の人、応に弁ずべきは差等を以てし、其の文も亦た応に示すべきは体裁を以てす。
茲に特に期に先んじて通行して告諭す。凡そ宗室・王公の内、其の文を能くする者は倶に進呈を准す。在内の満漢の大臣・京堂・翰詹科道、在外の督撫、凡そ科甲出身者より倶に一体に例に照らして備進するを准す。此の外は概ね呈逓を准さず。廃員に至りては罷斥の人に係れば、尤も応に越分妄干すべからず。倘し例に違いて僥倖の者有れば、各衙門概ね接収するを准さず。再た近来進呈せる各冊は往往にして貪多務博、繊巧新奇為るを競うこと甚だしきは人臣対揚の体に非ず。朕、宮中に於て披覧す。旧時、臣工の進むる所の冊頁は毎人、或いは詩数首、或いは頌賦一章あり。詞旨は敦厚にして、体裁も亦た復た正大なり。嗣後、諸臣、進冊する者は、毎人祗だ一冊を進むを准すのみ。詩文も亦た各々一体を専らにす。誇多闘靡し、華にして不寔なるを許す毋かれ。其れ択言は務めて雅正を求め、尤も当に頌して規を忘れず、政事に於て裨用有るを期し、朕の返樸還淳、文体を釐正するの至意に副うべし、とあり。此れを欽めり。欽遵して部に到る。相い応に該衙門に行文して一体に遵照すれば可なるべし、等の因あり。本兼署部堂に到る。此れを准けたり。合に就ちに行知すべし。箚を備えて司に行し即便に移行し、一体に欽遵せしむ、等の因あり。此れを奉けたり。
又、恩を体例に籲む等の事の為にす。
嘉慶二十三年五月初四日、総督部堂董(教増)の、本司の詳に批するを奉けたるに、査得したるに、琉球国の接貢船内の官伴・水梢人等の帯来せる土産の貨物は、先に経に詳もて憲台の批を奉け、開館貿易を准さる。当即に福防同知に檄行し、遵照して稽察し趕緊に貿易するを厳催し、完竣すれば験明し、造冊して取結し、詳報せしめ去後れり。
茲に署福防同知言尚焜の詳報に拠るに、接貢船内に帯来せる土産の貨物并びに官伴の随帯せる銀両は、嘉慶二十二年十月二十日に開館貿易し、本年四月二十一日に至りて完竣す。即ちに四月二十七日に離駅登舟す。
所有の接貢船上の官伴・水梢は原報の共に八十九員名の内、水梢肥加・長嶺二名の病故するを除き、又、接貢の存留官伴六員名を除き、又、水梢玉城・小嶺二名は、連江県より送到せる漂風難夷泉崎村即ち宮多郎の船内に派撥し引導として遣回せるを除き、又、水梢仲村渠・高江洲二名は、浙江太平県より送到せる難夷鄷国桂の船内に派撥し引導として遣回せるを除くの外、前年進貢して京回せる官伴二十員名を附搭し、又、前年進貢せる存留官伴の跟伴屋麻城一名は報故するを除くの外、寔在の官伴一十五員名を附搭し、通共して回国する官伴・水梢は統計するに一百一十二員名なり。
現に夷官の呈報に拠るに、四月二十七日に定めて離馹登舟す。此の時、行期緊迫し、未だ稽遅して風汛を悞るを致すに便ならず。相い応に前年の例に体照し、先行に詳明して咨を請い、該庁に飭令して験明し、貨物の冊・結を備造し、司に送りて另文もて呈送して案に備えしむるを除くの外、合に拠送せる花名の数冊を将て情に拠りて詳請し、伏して察核して迅やかに即日に批示を賜るを候ち、以て給咨して該国王に備移し、汛に乗じて遣発回国するを査照するに便ならしむべし。該庁に行令し、閩安協と会同して験明し、員弁を派撥して護送出洋せしめ、長行回国の日期を取具し、另に詳もて題するを請う、等の由あり。
批を奉けたるに、詳の如く給咨し、該国王に備移し、汛に乗じて遣発回国するを査照せしめよ。并びに福防同知に行して閩安協と会同して験明し、員弁を派撥して護送出洋せしめよ。仍お長行回国の日期を取り具詳して題を請え。并びに撫部院の批示を候て。繳す。冊は存す、とあり。
又、巡撫部院史(致光)の批を奉けたるに、詳の如く給咨し、該国王に備移し、汛に乗じて遣発回国するを査照せしめよ。福防庁に行令し、閩安協と会同して員弁を派撥して護送出洋せしめよ。仍お船内の貨物を将て盤験して清楚ならしめ、造冊し呈送して察査せしめよ。難番仲村渠等の各起の船隻に至りては、既に均しく四月二十七日を択びて登舟す。何を以て、遅れて今日に至るも尚お未だ具詳せざるや。是れ庁胥の玩延するか、抑も司書の遅擱するに係るや否や。該夷人登舟するの後、一たび風汛に遇えば、応に即ちに放洋せしむべし。而も該司、尚お未だ詳報し給咨せざれば、豈に遅悞せざらんや。仰即ちに査明して具覆し、一面に迅速に例に照らして詳辦し、并びに長行回国の日期を取具し叙詳して題を請え。再び遅延する毋かれ。速速たれ。仍お督部堂の批示を候て。繳す。冊は存す、等の因あり。此れを奉けたり。并びに福防庁に拠りて送到せる貨物の冊・結は前来す。
茲に遣発回国の期に当たり、合に就ちに移知すべし。此れが為に貴国王に備咨す。請煩わくは査照施行せられよ。須らく咨に至るべき者なり。
計、移送せる冊一本あり
右、琉球国中山王尚(灝)に咨す
嘉慶二十三年(一八一八)五月初四日
注*本文書の咨覆は〔一二五-〇四〕である。
(1)福建等処承宣布政使司 明清時代の福建省の行政官庁。長官は布政使。省の財政・戸口・田土の調査、朝命の宣布や道・府以下の監督、駅伝等の一般行政を統括した。琉球国を対象とする市舶提挙司・柔遠駅が置かれていた福建省の布政司は、明清時代を通じて琉球国との外交の窓口であった。
(2)接回 受け取って帰る。引きつれて帰国する。
(3)貴国王の咨 〔一二二-〇一〕。
(4)案照 前の案件に照らし。(根拠とすべき)公文書によれば、の意。
(5)本爵 皇族・王族の自称。琉球国王の位は皇帝から与えられた王爵。
(6)貢典 朝貢についてのきまり。
(7)表章 皇帝に奉る表文や奏本で、朝貢国では表文は謝恩・慶賀・進貢などの際に用いられ、それ以外は奏本が用いられた。
(8)両院 総督と巡撫。総督は一省ないし数省の民政・軍務を掌る地方行政の最高官。巡撫は省の長官。「両院」の「院」は都察院のことで、総督・巡撫が都察院の職名を兼ね有することからいう。
(9)転詳 詳を上司へ取りついで報告すること。詳は上級官庁に報告して指示を受けるための文書。
(10)起送 出発する。
(11)聖禧 天子の幸福。
(12)叩祝 「叩」は叩頭の意。皇帝の御前でひざまずき、頭を地面にすりつける儀礼。礼を尽くして祝うという意味。
(13)魏崇仁 久米村系魏氏。高嶺里之子親雲上(『家譜(二)』一一頁、王朝銓の譜)。嘉慶二十二年接貢の在船都通事。『宝案』ではほかに嘉慶五年の王舅通事(巻九一)、嘉慶十四年護送船の都通事(巻一〇七)としても名がみえる。
(14)坐駕 坐は(すわって)乗る。駕は操縦する。
(15)欽賜 天子から賜う。恩賜。
(16)京回 都より帰る。ここでは北京から福州へ戻ること。
(17)王士惇 久米村系王氏。瀬名波親雲上。嘉慶二十一年進貢の都通事。『宝案』ではほかに嘉慶十一年の具結状に中議大夫(巻一〇一)、道光二年進貢の正議大夫(巻一三三)としても名がみえる。
(18)存留通事 進貢・接貢の際に使者に随行して中国に渡り、福建にとどまって福州琉球館における外交折衝・貿易業務等にあたる。
(19)鄭択中 神山親雲上(『家譜(二)』四四一頁、孫光裕の譜)。久米村系鄭氏。嘉慶二十一年進貢の存留通事。『宝案』ではほかに道光二年進貢の都通事(巻一三三)、八年進貢の朝京都通事(巻一四七)、十二年進貢の副使正議大夫(巻一五五)としても名がみえる。
(20)遠人 首都からはるかに離れた遠方の人々。地の果てに住む人々。世界中の遠い国の人々。ここでは琉球。
(21)懐柔 思いやり懐けること、帰順させること。「遠人を懐柔」は遠方の琉球を思いやって懐けること。『礼記』「中庸」に「凡そ天下・国家を為むるに、九経有り。曰く、身を修むるなり。賢を尊ぶなり。親を親しむるなり。大臣を敬するなり。群臣を体するなり。遠人を柔げ、諸侯を懐くるなり」とある。
(22)至意 誠意。まごころ。
(23)仰体 仰いでしっかり受け止めること。
(24)早汛 陰暦五月以前に吹く航海に適した季節風のこと。
(25)返棹 帰国する。
(26)驚濤の虞 驚濤は恐るべき荒波。荒波が激しくなる恐れ。
(27)咨達 咨文を送達する。
(28)察照 明察する。つまびらかに知る。明らかにする。
(29)等の因あり 引用文の終りを示す語。ふつうは上級または同級機関からの引用に用いる。
(30)此れを准けたり 「准此」は同等機関からの文書を受け取ったことを示す接受語。上記の文書を受け取りました、の意。
(31)檄 上級機関からの指令の文書。
(32)探護 探索して護送する。
(33)兼署巡撫部院 総督が福建巡撫を臨時に兼務していること。
(34)董(教増) ?~道光二年(一八二二)。字は益甫。諡は文恪。江蘇上元の人。乾隆四十五年、南巡の挙人(召試)。五十一年(丁未)の進士。嘉慶五年四川按察使となり、九年四川布政使となる。その後安徽巡撫、陜西巡撫、広東巡撫などを経て、二十二年閩浙総督となる(『清史稿』巻三五七、列伝一四四)。
(35)憲牌 上司の指令・通達文書。憲は上官への尊称。
(36)署閩安副将 福建水師提督下に閩安協があり、副将はその指揮官(『(光緒)清会典』巻四五)。署は代理。
(37)陳元標 福建の人。嘉慶二十年二月題補提標中軍参将となる。嘉慶二十二年の署閩安副将(『清代官員履歴檔案全編』)。
(38)督部堂 総督。ここでは董教増。この時期福建巡撫を兼務していた。
(39)憲檄 檄は上級機関からの指令の文書。ここでは福建巡撫董教増の指令、またはそれを記した文書。
(40)着令 命令する。
(41)本幫 幫は仲間、組織の意。ここでは署閩安副将陳元標の属する水軍か。
(42)督帯 監督して引率する。
(43)職 ここでは卑職の意。わたくし。
(44)標 総督直属の軍隊のこと。清代においては、総督・巡撫に直属する督標・撫標が設けられた。ここでは、閩浙総督直属の海軍のこと。
(45)汛弁 汛は緑営(漢人のみで編成し治安維持に当たる軍)の軍組織における最小の単位で、千総・把総等が率いる。弁は員弁、役人。ここでは緑営の官兵か。
(46)巡緝 巡察緝捕のことで、巡回して犯罪者を捕らえること。
(47)分飭 各関係部署に訓令を発することか。
(48)留心 注意すること、気をつけること。
(49)護左営都司 水師は閩安水師副将の下に左営都司・右営都司、左営遊撃・右営遊撃などの武官職がおかれた。都司は明代に初めて置かれ、清代においては正四品官の武職、副将のために営務を統轄した。護は護理の意か。護理は下級の官職の者が上級の職を代行すること。
(50)張啓明 嘉慶二十二年の護左営都司。
(51)署中軍守備 中軍営務処の守備。署は代理。清の軍制の武官で、水師は中営・左営・右営の三営に分かれ、遊撃・守備・千総・把総の順で武官職がおかれた。
(52)陳登貴 嘉慶二十二年の署中軍守備。
(53)亭頭汛 閩江県亭頭郷に置かれた緑営。通行する船の監督・取り締まりを行った。
(54)外委 定員外に任命した役人のこと。
(55)蔡長青 嘉慶二十二年の亭頭汛外委。
(56)蔡修 乾隆四十二~道光十二年(一七七七~一八三二)。儀間親雲上。久米村系蔡氏(儀間家)十六世。嘉慶五年通事、十三年都通事、道光二年中議大夫に陞る。嘉慶二年読書習礼のため閩に赴き、五年帰国。嘉慶二十二年接貢の存留通事、道光四年進貢二号貢船の大通事を務めた。嘉慶元年家統を継ぎ小禄間切儀間地頭職を授かる(『家譜(二)』二六九頁)。
(57)官伴 官員・人伴の略。官員は正使などの職務についている役人。人伴はその従者。
(58)水梢 水夫。船乗り。
(59)四嶼洋面 四つの島嶼群のことか。ここでは、媽祖列島、東沙島、白犬列島方面のことか。
(60)定海汛 福建省福州府の西部に位置している。現在の福建省福州市連江県に置かれた緑営の駐屯地。
(61)把総 清の武官。緑営の最小編成単位である哨の指揮官。
(62)陳忠義 嘉慶二十二年の定海汛把総。
(63)虎に進み 五虎門に進むこと。
(64)移交 引き渡すこと。引き継ぐこと。また引き渡された文書。
(65)接護 受け取って護送する。護送の任務を引き継ぐ。
(66)前来 送って来る。持って来る。到来する。
(67)兵目 兵の頭目。軍官。
(68)管帯 管理して随行することか。
(69)小心に 注意深く。慎重に。細心の注意を払って。
(70)亭頭怡山 亭頭は閩侯県亭頭郷。海防の要衝である閩安鎮近く、怡山院天妃宮のあった所。怡山院に到着すると進貢船は一旦そこで停泊し、閩安鎮の官吏の検査(会験)を受けた。
(71)江干 岸辺、川沿い。
(72)抛泊 いかりを下ろす。
(73)理として合に~べし 規定上当然…すべきである。
(74)具報 上級機関が下級機関に発した文書の中で、下級機関があることを実行したのち、文書の形式で、その結果を上級機関に報告すること。
(75)転報 とりついで報告する。
(76)飭行 命令を発する。命じて実行させる。
(77)目兵 兵目に同じか。兵卒中の小頭領か。
(78)牌を備え 牌は地方の上級機関から下級機関へ送る命令書。牌を作成して、の意。
(79)司に行し 司は布政使司。布政使司に送る。
(80)福防庁 福州府海防同知庁の略。福州府の下部機関で、沿岸の防備などを管轄した。その長は海防同知または海防通判で、府の長官である知府の指揮を受けた。
(81)転行 上司の命令を受け取って関係機関へ転送して通知する。
(82)査照 調べて承知する。うけとった文書の内容をよく検討して趣旨を了解し、それによって事務を処理することをあらわす語(「用語解説」参照)。
(83)内港 外洋とは隔てられた港内。
(84)帯進 つれすすむ。一緒に進む。
(85)営汛 営は緑営。汛は緑営の軍組織における最小の単位で、千総・把総等が率いる。
(86)験明 検査して明らかにする。会験明白の略か。
(87)館駅 福州にある琉球館を指す。正式には柔遠駅と言う。
(88)安頓 落ち着かせる。安挿と同じ。
(89)辦理 処理する(こと)。
(90)詳報 詳文で上級官庁に報告する。
(91)総督部堂 総督は複数省の民政・軍務を掌る地方行政の最高の長官(『清国行政法』第一巻下、三一~四〇頁参照)。部堂は、六部の侍郎をいい、堂は堂上官の略語。各省の総督にも尚書の銜(官位)を加えたので、部堂といった。
(92)詳 上級機関の指示を仰ぐため、下級機関から上級機関に報告する公文書の一種。「詳に批する」は、下級機関が送った報告文に上級機関が批(指示)を入れること。ここでは布政司からの文書に総督が指示をすること。
(93)査得 調査したところ、それによれば、の意。官庁の所属部局の主管の官が保存書類などの調査結果に基づいて問題の案件に関する自己の見解を上司に具申するとき、文章の冒頭に用いる。『宝案』では、題本・詳によくみられる。文末に「案に在り」とすることがある。
(94)率領 (隊伍や集団を)率いること。
(95)閩 福建省の別名。
(96)南台 福建省閩侯県の南九里にある釣台山のことで、島の北岸は貢船の停泊地であった。また閩江と南台島の間の中洲には閩海関が置かれていた。
(97)番船浦 閩江沿いにある外国船(番船)の停泊所。福州と南台を結ぶ大万寿橋の河口部にある中洲にあった。停泊所として番船浦が使用されるようになったのは嘉慶末以降からである。
(98)駛抵 航行して到る。
(99)福州府海防同知 福州府の下部機関で、沿岸の防備などを管轄した福州府海防同知庁の長官。
(100)言尚焜 江蘇鑲熟の人。挙人。嘉慶十三年閩県知県となる。嘉慶二十二年には署福防同知(『(同治)福建通志』巻一〇八)。
(101)福州城守営副将 閩、侯官、古田、屏南、閩清、永福の各区県を分守する緑営の長官(『清代地方官制考』参照)。
(102)安慶 直隷清苑の人。嘉慶十五年五月補福建北路営副将となり、嘉慶十八年福州城守営副将となる(『(同治)福建通志』巻一一九)。
(103)閩海関 福州城外の南台島におかれた税関。閩海関の管理は福州将軍が兼ねていた。福建では初め漳州に海関が設けられ、その後南台、厦門、泉州、涵江、安海、銅山、閩安鎮などに置かれ、五虎門から入ってくる船には閩安鎮で、福建から出ていく船には南台で納税させた(『清代地方官制考』参照)。
(104)希霖布 嘉慶二十二年の閩海関委員。『選編』では南台口税務驍騎校として名がみえる。驍騎校は清代の八旗の武官。
(105)会験 会同盤験の略。合同で検査する。立ち会って点検すること。
(106)安挿 落ち着かせる。配属する。
(107)造冊 帳簿や人名・貨物等のリストを作成すること。
(108)抄白 写しをとる。文章の写し。控え。
(109)符文 琉球国王が進貢使節に対して発給した証明書。通常の進貢使のほか、冊封謝恩使・慶賀登極使・先帝への進香使・官生など、北京へ赴く人員に対して交付された。
(110)執照 琉球国王が外国に出航する船ごとに発給した証明書。原則として一船につき一通を給付し、派遣の理由と目的地、使節・乗組員の氏名・人数、積載荷物と数量などを明記した。進貢の場合は頭号船と二号船それぞれに発給された。
(111)清冊 リスト。明細。目録。
(112)転造 他機関からの報告にもとづいて作成すること。
(113)詳送 詳文(下級機関から上級機関への公文書)と一緒に送付する。
(114)撫憲 巡撫。憲は憲台(地方に駐する高官の尊称で、総督・巡撫に対する呼称)。
(115)主稿 主稿官。主となって草案をつくること(『六部成語注解』)。
(116)合併声明 「声明」は言明する、公言して意志を明らかにすること。いくつかの事柄をあわせて言明する。
(117)等の由 引用文の文末におく語。下行文の引用に用いる。
(118)批 上級官庁が下級官庁から、または官庁が民間からうける報告・申請などに対し、(多くは書面で)何らかの決定・指示・回答を与えること。「批を奉けたるに」は、指示を受けたところ、(以下のような指示であった)の意。
(119)核題 調べて題奏する。
(120)仰候 仰いで指示を待つこと。「仰」は指示を求める、「候」は(意見を)うかがう、の意がある。
(121)繳す かえす、返還するの意。上級機関が下級機関からの文書に批(指示)をつけて返送する時、その批の末尾に用いる用語。
(122)冊 帳簿、帳面。物品リスト。
(123)史(致光) ?~道光八年(一八二八)。浙江山陰の人。乾隆五十二年の進士第一人。嘉慶十九年雲南按察使、貴州布政使を経て、嘉慶二十二年から二十四年まで福建巡撫を勤めた後、雲南巡撫を経て二十五年雲貴総督、道光三年都察院左都御史となる(故宮博物院図書文献館「伝稿」)。
(124)察核 取り調べること。文書などを詳細に調査すること。
(125)批示 批と同じ。下級機関から提出された文書に付記された上司の指示。ここでは総督部院の指示。
(126)抄照 執照の写し。「抄」は写すこと。
(127)存送 同一文書の写しの一部を当該機関で保存し、他の一部を関係部署へ送る、の意。
(128)恩を体例に籲む 体例はきまり、規範。規範化されている慣例に従って恩恵を賜ることを要請する、の意。
(129)接貢船 朝京の使節団を出迎えて帰国させる目的で派遣された船。琉球は十五世紀末から二年に一度朝貢することが定例となっていたが、十七世紀後半に到って進貢船が派遣されない年に進貢の使節を出迎えるという名目で、船が福州に派遣された。これを「接貢」と呼び、そのために派遣される船を「接貢船」と呼んだ。
(130)兌買 売買。兌は売り渡す、の意。
(131)史書 歴史の書物。史籍。
(132)黒黄紫皁大花西番蓮緞疋 黒・黄・紫・皁色の大きな花模様の刺繍を施した絹織物のことか。黒・黄は天地の色、紫は神仙・帝王の色、皁は黒で、朝服の色である。西番蓮はトケイソウ(時計草)。花弁が時計のように放射状に開いているところからいう。
(133)焰硝 火薬。硝石。
(134)牛角 牛の角。
(135)桐油 オオアブラギリの種子からとる油。乾隆年間には違禁貨物に数えられている(『選編』一一頁)。
(136)黄紅銅器 黄銅や紅銅の器。黄銅は銅と亜鉛の合金(真鍮)、紅銅(銅)は琉球の進貢品の一つでもあり、黄銅は精錬が難しく、いずれも貴重だった。
(137)糸綢 絹織物のこと。
(138)綾絹 あや織りの絹。あやぎぬ。
(139)紗羅 紗も羅もともに薄絹、または布面に隙間をもたせた透け感のある布のこと。
(140)例禁 条例・規則などに記されている禁止条項。禁令。
(141)収買 購入する。
(142)乾隆二十八年の間、諭旨 乾隆二十八年(一七五九)の諭旨。「准其歳買、土糸五千觔、二蚕湖糸三千觔、用示加恵外洋至意」とある(『(光緒)清会典事例』巻五一一)とある。
(143)土糸 手繰りの生糸。ここでは中国産を指す。
(144)二蚕湖糸 浙江省湖州で夏季に産する生糸。
(145)歳買 年間額を定めて購入すること。
(146)前憲 前任の総督・巡撫。ここでは乾隆三十年当時の福建巡撫李因培をさす。
(147)奏准 上奏して皇帝の裁可を得る(こと)。
(148)糸觔 生糸。
(149)綢緞 紬緞とも。綢(紬)も緞も絹織物。綢は紬、緞は厚みのあるものを言う。
(150)改配 一定の換算率で甲を乙に代える。ここでは生糸を絹織物に代えること。
(151)抵扣 あてて差し引く。換算して差し引くこと。
(152)扣除 差し引くこと。抹消する。ここでは冊に記した乗組員の名簿から名を抹消する。
(153)給示 指示を与えて。
(154)呈請 提出して要請すること。
(155)開館貿易 福州琉球館において琉球から持参した銀や積載品と中国産品を売買した公許の貿易。
(156)体恤 相手の身になって考えて行う、あわれむ。恩恵。
(157)憲行 上司の命令。
(158)遵奉 したがいまもる。遵守。
(159)看管の員役 監視の役人。
(160)厳飭 きびしく命じること。飭は命令すること。
(161)稽察 治安保護のため官兵を派遣して巡察させること。
(162)採買 購買。選んで買うこと。
(163)摺報 公文書で報告する。
(164)配搭 船に載せること。
(165)扣抵 抵扣に同じ。差し引いて充てる。
(166)氈条 毛氈。毛布。ベッドに敷く羊毛製の絨毯。
(167)買帯 購入し携帯する。
(168)把駅の員弁 琉球館の警備役人。
(169)陋規 賄賂。広義では、公人が公務について法律で定められた給与以外に受領する収入をさす。官吏が種々の名義を設けて不法に徴収する手数料。
(170)需索 不法な手段でねだる。強要する。
(171)土棍 土地の棍徒(無頼漢)。
(172)奸民 狡猾な人民。
(173)勾通 ぐるになる。結託する。結託・共謀する。
(174)局騙 巧妙に他人の財物を詐取する。
(175)禁物 交易を禁じられた物品。『(光緒)清会典事例』巻五一一、礼部の「朝貢、禁令一」に「凡外国貿易、不許収買史書、黒黄紫皁大花西番蓮緞、並一応違禁兵器、焔硝牛角等物」とある。
(176)串帯 ぐるになって持ち出す。
(177)額を逾えて 「額」は貿易が許可された定額(年間購入額)。定額を超えて。
(178)滋弊 弊害が生じること。問題を起こすこと。
(179)客商 ここでは琉球館付きの御用商人を指す。球商ともいう。
(180)細冊 明細書。
(181)彙造 一つにまとめる。
(182)査考 検証して調べる。
(183)訳諭 通訳して諭す。
(184)趕緊 急ぐこと。ただちに。
(185)報竣 終了を報告すること。
(186)詳請 詳文(下級機関から上級機関への公文書)で要請すること。ここでは布政使から総督へ公文書で要請すること。
(187)貽悞 手間取る。遅れる。
(188)盤験 関口・津渡を通行する者に対して、その身分・用向等を訊問し、荷物を検査すること。盤詰査験の略。
(189)透漏 手落ち、遺漏。
(190)柔遠駅 福州に設置された琉球使節の宿泊所。琉球館ともいう。
(191)寔貼 実貼。告示などを掲示すること。
(192)暁諭 はっきりと教えさとす。
(193)章程 程は法式。(規則などの)法式を記した文章。
(194)飭遵 命じて指示通りに実行させる。
(195)報査 調べて報告させること。調査して報告すること。
(196)竣報 終了したことを報告すること。
(197)通行 文章を送って通知する。
(198)王(紹蘭) 字は南陔。浙江蕭山の人。乾隆五十八年の進士。福建南屏知県、閩県知県、福建布政使などを経て、嘉慶十九年福建巡撫となるも二十二年汪志伊の罷免に伴い解職(『清史稿 三七』巻三五九、列伝一四六・故宮博物院図書文献館「伝包」)。
(199)箚付 訓令文。上級官庁から下級へ行移する文書であるが、上司がその所属の下級衙門に給することが多い。
(200)儀制司 礼部の四清吏司の一つ、儀制清吏司のこと。朝儀・冠服・宗室の婚礼・学校等の事務を分掌する。
(201)旬慶の大典 嘉慶帝の六十歳の誕生日を祝うめでたい儀式。旬は十日、あるいは十年をひとまとまりとしたもの。嘉慶帝は乾隆二十五年(一七六〇)生まれである。
(202)鑾輅 鑾和(天子の車に附ける鈴)の附いた車。天子の乗る馬車。
(203)時巡 皇帝が時を以て地方を巡視すること。周代、天子が十二年毎に春は東、夏は南、秋は西、冬は北を巡ったことからいう。
(204)臣工 群臣百官。工は官。
(205)呈献 贈呈する。献呈する。
(206)盛京 現在の遼寧省の省都瀋陽のこと。遼寧省は中国東北部に位置し、南西部は黄海と渤海に面し、南東部は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と接する。清朝の初代皇帝ヌルハチの時、遼陽の京城から瀋陽へ遷都して盛京と改称、北京遷都後も陪都として奉天府といい、行政長官として府尹を置くほか、別に奉天将軍を置いて軍事を統括させた。
(207)三陵 清の太祖ヌルハチ以前の祖先の墓である永陵、ヌルハチの墓である福陵、太宗ホンタイジの墓である昭陵をさして三陵と言う。
(208)周甲 満六十歳。還暦。
(209)雍容 やわらいだ姿。温和な容貌。
(210)揄揚 褒めそやす。
(211)天保頌君 天の保佑により皇帝の地位が安定し、安寧が続くようにと皇帝を褒め称えること。天保は『詩経』「小雅・鹿鳴之什・天保」に「天保定爾、亦孔之国」とある。また、「天保」の詩序には「天保は、下の上に報いる也。君能く下に下して以て其の政を成せば、臣能く美を帰して以て其の上に報ゆ」とある。頌は文体の一つで神明・人君などの盛徳をほめたたえるもの。
(212)下情 しもじもの様子、庶民の実情。
(213)盛典 盛大な式典。
(214)体裁 詩文の格式。体制(詩文の体裁)と剪裁(文章を練ること)。
(215)宗室 皇帝の一族。満洲王朝の創始者たる太祖ヌルハチの父・顕祖宣皇帝の直系子孫をいう。
(216)王公 諸侯。王(親王・郡王)、公(公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵)。
(217)満漢の大臣 満洲人・漢人の各大臣。
(218)京堂 京官(京師に在勤する官吏)のこと。
(219)翰詹科道 翰は翰林院、詹は詹事府、科は六科給事中、道は各道の御史をいう。
(220)科甲 科挙のこと。
(221)備進 準備をする。献上する準備をする。
(222)呈逓 差し出す。進呈する。
(223)廃員 官職を廃止された者。
(224)罷斥 罷免すること。
(225)越分妄干 分限をこえてみだりにおかすこと。
(226)僥倖 思いがけぬ幸せ。
(227)衙門 役所。公的機関。
(228)貪多務博 貪多は多くを貪る、欲を深くする。『韓愈』「進学解」に「貪多務得、細大不捐」とあり、本来は知識を多く得ようと務めることをいうが、後に物事に貪欲で多くを求め多くを得ようとすることをいう。「務博」は「務得」の誤りか。あるいは広く(多く)得ようと務めるの意か。
(229)繊巧新奇 繊巧は細かく巧み。精緻。新奇は新しく珍しい。「繊巧新奇為るを競う」は冗漫、過剰で奇を衒うことを競う、の意か。
(230)対揚 君命にこたえてその意を天下にあらわす。民に向って宣揚する。「人臣対揚の体に非ず」は、(近来進呈される冊は)皇帝の意を人臣に向かって宣揚する体をなしていない、との意か。
(231)頌賦 頌と賦。頌は人君の盛徳をほめて神に告げる祭りの詩。賦は比喩などを用いずありのままによむ詩の叙述法のこと。
(232)敦厚 情に厚い。篤実。誠実。
(233)誇多闘靡 自らその宏博なことをほこり、美をきそう。『韓愈』「送陳秀才序」に「読書以為学、纘言以為文、非以誇多而闘靡也」とある。
(234)択言 言葉を選ぶこと。
(235)雅正 みやびやかで正しい。
(236)裨用 役に立つ。為になる。
(237)返樸還淳 樸に返り淳に還る。樸・淳はすなお、飾り気がない。原始的で誠実であり質素で温厚な社会気風の回復。
(238)釐正 治め正す。あらためただすこと。改正。革正。
(239)行文 文書を送ること。
(240)遵照 指示に従う。
(241)箚を備え 箚は上級官庁から下級官庁へ送る公文書のこと。上司からの命令文書を付して、の意。
(242)移行 同等機関に移文を送って知らせること。
(243)憲台 皇帝に任命されて地方に駐する高官の尊称。下級官吏の上司に対する尊称。清代では総督・巡撫に対する呼称。ここでは閩浙総督のこと。
(244)檄行 指令を送る。檄は上級機関からの指令の文書。
(245)厳催 きびしく促すこと。
(246)完竣 完了する。おわる。
(247)取結 結(保証書)を作成すること。
(248)去後れり 「去後」はある事件が完了したことを示す用語。「~しおわれり」と読む場合と、「~せり、その後~」と読む場合がある(「用語解説」参照)。
(249)離駅登舟 駅(柔遠駅)を出て船に乗る、出航すること。
(250)原報 当初の報告。
(251)連江県 福州府連江県。台湾海峡に面し、県の南端は閩江の河口に接する。
(252)引導 水先案内。
(253)太平県 浙江省台州府に属する。浙江省東部沿海のほぼ中央、今は温嶺県と改める。
(254)附搭 搭載すること。
(255)跟伴 従者。
(256)報故 亡くなったことを報告する。
(257)寔在 実際に。実際の。
(258)通共 まとめて一緒に。合計。
(259)統計 集計する。
(260)呈報 呈文(下級機関から上級機関へ提出する文書)で報告する。またその文書。
(261)稽遅 遅延する。
(262)風汛 発船に適した季節風。ここでは琉球への航海に有利な初夏の季節風。
(263)体照 参照する。
(264)詳明 詳文で事情を説明する。
(265)飭令 命令する。命じてさせる。
(266)冊・結 細冊(明細書)または清冊(貨物・人名リスト)と甘結(証明書・保証書)。「冊」は主として帳簿の類をいい、「結」は積載した貨物の数量についての証明書をいう。
(267)備造 作成する。
(268)呈送 呈文を送る。
(269)案に備え 案(書類)を記録して。登録して。
(270)拠送 証拠として送ること。
(271)花名 登録人名。人名リスト。
(272)給咨 咨文を発給すること。
(273)備移 移文(移は同等機関に送る公文書)を準備して。
(274)汛に乗じて 汛は季節風のこと。ここでは季節風に乗っての意。
(275)行令 下級機関に文書で命令、指示すること(「用語解説」参照)。
(276)閩安協 閩安協副将のこと。閩安鎮に駐し、海防を担当した。
(277)長行回国の日期 長い航海をして帰国するための出発の日付。長行回国は港を離れ遠洋航海して帰国させることである。通常、福建の護送船が五虎門沖まで送り、出発したのを見届けて布政司に報告する。その間一ケ月以上かかることもあった。五虎門北の沖合までは福建の海上警備の海域であった。
(278)取具 受け取って保管する。
(279)題を請え 題は上奏文の一つ。上級の諸機関が公事の上奏に用いた文書(題本)をしたためて上奏するように、の意。
(280)冊は存す 冊(帳簿、物品リスト)を手元に保管、保存しておくこと。
(281)清楚 明らか。はっきりとしていること。
(282)察査 調査し明らかにする。
(283)庁胥 胥吏のこと。下級官吏。下役。
(284)玩延 延引する。怠慢。
(285)司書 書記。文書を作成する下級役人か。
(286)遅擱 擱は、中断する、遅延する、手間取る。(文書作成が)遅れている、の意か。
(287)放洋 海に出る。出航する。
(288)遅悞 遅れて予定の期日に間に合わない。
(289)査明 調査して明確にすること。
(290)具覆 文書で回答する。返事する。
(291)詳辦 詳しくわきまえ知る。
(292)叙詳 詳は上級官署に出し指示を仰ぐ公文。詳文を作成すること。
(293)速速たれ 速速、は上級より下級への文書の末尾に記し、その文書の内容の速やかな処理を命ずる語。
(294)移知 同等機関に公文書を送って知らせること。移会、移行も同じ。
(295)備咨 咨文を作成する。
(296)移送 移文と一緒に送付する。移文は同等の、統属関係にない機関の間で交換する文書(「用語解説」参照)。
福建等処承宣布政使司、勅書を恭迎し、併びに使臣を接回せんが事の為にす。
貴国王の咨を准けたるに開す。
案照したるに、本爵は貢典に欽遵し、業に嘉慶二十一年秋に耳目官毛維憲・正議大夫蔡次九等を遣わし、表章・方物を齎捧して天朝に入貢せしむ。経に本爵、咨もて両院に転詳し、起送して入京し、聖禧を叩祝せしめられんことを請いて案に在り。
茲に還国の期に当たり、例として応に船を撥りて接回すべし。此れが為に特に都通事魏崇仁等を遣わし、海船一隻に坐駕し、前みて閩省に詣らしむ。皇上の勅書・欽賜の物件を恭迎し、併びに京回の使臣毛維憲・蔡次九・王士惇と在閩の存留通事鄭択中等を接えて帰国せしめんとす。仍お祈るらくは、督/撫両院に転詳し、皇上の遠人を懐柔するの至意に仰体せんことを。希わくは来船の員伴を将て例に照らして館駅に安頓し、事務の完竣するを俟ちて、来夏の早汛にて貢使等と同に均しく原船に坐駕せしめ、遣発して返棹するを准さるれば、則ち航海の末員、驚濤の虞を免るるを得るに庶からん。相い応に咨達して察照すべし、等の因あり。此れを准けたり。
又、特に檄もて探護せしめんが事の為にす。
嘉慶二十二年九月二十六日、兼署巡撫部院董(教増)の憲牌を奉けたるに、署閩安副将陳元標の報に拠るに称すらく、本年九月初七日、督部堂の憲檄を奉けたるに、元標に着令して本幫兵船を督帯して琉球の接貢夷船を探護し省に進ましめよ、等の因あり。此れを奉けたり。
当即に職、標両営の各汛弁並びに巡緝の幫船に分飭して、一体に留心し探護せしむるの外、茲に護左営都司張啓明の報に拠るに、署中軍守備陳登貴の報に拠るに、亭頭汛外委蔡長青の報に拠るに称すらく、切かに照らすに、琉球国の接貢夷船一隻、内に配せる通事蔡修、官伴・水梢と同に共に八十九員名は、本月十三日未の刻に四嶼洋面に寄泊す。経に定海汛把総陳忠義、十四日早潮に、護送して虎に進み、移交して接護して前来せり。
該外委、遵いて即ちに兵目を管帯し、船隻に駕坐し、小心に該夷船を防護す。午の刻に至りて、亭頭怡山江干に到りて抛泊す。理として合に具報すべし、等の情あり。転報して職に到る。此れを拠けたり。鎮口汛弁に飭行し、目兵を管帯して船隻に駕坐し、小心に防護して省に進ましめ、另に報ずるを除くの外、合に夷船の虎に進むの日期を将て具報すべし、等の情あり。本兼署撫部堂に到る。此れを拠けたり。
合に就ちに飭行せしむべし。牌を備えて司に行し、即便に福防庁に転行して査照せしめ、即ちに琉球の接貢夷船を将て、内港に帯進せしめ、営汛口員と会同して験明し、官伴人等は館駅に安頓し、例に照らして辦理し詳報せしむ。違う毋かれ、等の因あり。
又、前事の為にす。
嘉慶二十二年十月二十六日、総督部堂董(教増)の、本司の詳に批するを奉けたるに、査得したるに、琉球国王尚灝、都通事魏崇仁等を遣わし、官伴・水梢共に八十九員名を率領し、海船一隻に坐駕して閩に来たらしめ、勅書併びに進貢の使臣を迎接して回国せしめんとす。嘉慶二十二年九月十八日に南台の番船浦に駛抵して停泊す。署福州府海防同知言尚焜、福州城守営副将安慶・閩海関委員希霖布と会同するを経て、九月二十一日に人数併びに帯来せる土産・銀両・雑物及び防船の軍器を会験し、即ちに是の日に館駅に安挿す。分別に造冊し、抄白の符文・執照と同に詳送して前来す。合に就ちに清冊を転造して詳送し、伏して察照して具題するを候つべし。此の案は、応に撫憲の主稿を請うべし。合併声明す、等の由あり。
批を奉けたるに、撫部院の核題するを仰候せよ。繳す。冊・抄白の執照は存す、とあり。
又、巡撫部院史(致光)の批を奉けたるに、察核して具題するを仰候せよ。仍お督部堂の批示を候て。繳す。冊・抄照は存送す、等の因あり。此れを奉けたり。
又、恩を体例に籲む等の事の為にす。
嘉慶二十二年十月二十四日、総督部堂董(教増)の、本司の詳に批するを奉けたるに、査得したるに、琉球国の進・接貢船隻、閩に来たる。所帯の銀両は、例として応に開館し、該夷官の兌買交易するを聴すべし。惟だ査するに、史書・黒黄紫皁大花西番蓮緞疋・焰硝・牛角・兵器・桐油・鉄鍋・黄紅銅器以及び糸綢・緞疋・綾絹・紗羅等の物は、均しく例禁を干せば、収買するを許さず。
乾隆二十八年の間、諭旨を欽奉し、琉球国に其の土糸五千觔・二蚕湖糸三千觔の歳買を准さる。又、乾隆三十年の間、前憲の奏准を奉け、歳買せる糸觔八千觔の内、綢緞二千觔に改配せんとすれば、千觔毎に糸一千二百觔に抵扣し、数に按じて扣除せしむ、各等の因あり。欽遵して案に在り。
茲に該庁の詳に拠るに、該夷官の請うに拠るに、接貢船内に帯来せる土産の貨物を将て、給示して開館貿易せんことを呈請す。相い応に俯して請う所の如くし、即ちに期を定めて開館貿易せしめ、以て体恤を昭らかにすべし。
仍お飭して憲行を遵奉し、看管の員役に厳飭して留心に稽察し、開館の日より始めと為し、採買せる貨物を験明ならしめ、日に按じて摺報せしむ。仍お開館の日期を将て先行に通報せしむ。収買せる糸觔を紬緞に改配するに至りては、均しく定額に遵い配搭して扣抵し、其の余の氈条・布疋・薬材等の物で例禁の内に在らざる者は、応に買帯するを准すべし。把駅の員弁・兵役の陋規を需索するを許さず、附近の土棍・奸民の入館し勾通局騙し、禁物を串帯し、額を逾えて滋弊するを厳禁す。
併びに土通事をして交易せる客商の姓名・兌買せる物件を将て日に按じて摺報せしめ、事竣われば該庁に着令して細冊を彙造し、司に送り査考せしむ。并びに飭して夷官等に訳諭し、趕緊に貿易し期を剋して報竣せしめ、遣回するを詳請し、逗遛して貽悞するを許す毋からしむべし。仍お事竣わるの日を俟ちて、買う所の各項の貨物を将て、員に委して盤験して上船せしめ、以て透漏を杜ざさしむ。給示して柔遠駅に寔貼して暁諭するを除くの外、理として合に詳報すべし。伏して察核して批示するを候つ、等の由あり。
批を奉けたるに、詳の如く飭遵せよ。仍お撫部院の批示を候て。繳す、とあり。
又、巡撫部院史(致光)の批を奉けたるに、詳に拠り已に悉くせり。給示して暁諭するを仰候せよ。仍お歴届の章程に照らし、分別に飭遵して辦理し、先に開館の日期を将て報査せしめよ。并びに趕緊に貿易せしめ、竣報して期に至れば、遣回するを詳請せよ。仍お督部堂の批示を候て。繳す、等の因あり、此れを奉けたり。
又、通行せんが事の為にす。
嘉慶二十二年四月十八日、前兼署総督部堂王(紹蘭)の箚付を奉けたるに、嘉慶二十二年四月初九日、礼部の咨を准けたり。
儀制司案呈す。嘉慶二十二年二月二十三日、内閣の抄出したるに、二十一日、上諭を奉じたるに、国家、向きに旬慶の大典に遇い、鑾輅の時巡に或う。臣工等、例として詞章を呈献するを得る。明年、朕、盛京を巡幸し祗んで三陵に謁す。歳を越えての己卯、朕、周甲の旬慶に届る。諸臣は雍容揄揚し、合に諸れ天保頌君の義にして、原より以て下情に達して盛典を光かすべし。但だ呈進の人、応に弁ずべきは差等を以てし、其の文も亦た応に示すべきは体裁を以てす。
茲に特に期に先んじて通行して告諭す。凡そ宗室・王公の内、其の文を能くする者は倶に進呈を准す。在内の満漢の大臣・京堂・翰詹科道、在外の督撫、凡そ科甲出身者より倶に一体に例に照らして備進するを准す。此の外は概ね呈逓を准さず。廃員に至りては罷斥の人に係れば、尤も応に越分妄干すべからず。倘し例に違いて僥倖の者有れば、各衙門概ね接収するを准さず。再た近来進呈せる各冊は往往にして貪多務博、繊巧新奇為るを競うこと甚だしきは人臣対揚の体に非ず。朕、宮中に於て披覧す。旧時、臣工の進むる所の冊頁は毎人、或いは詩数首、或いは頌賦一章あり。詞旨は敦厚にして、体裁も亦た復た正大なり。嗣後、諸臣、進冊する者は、毎人祗だ一冊を進むを准すのみ。詩文も亦た各々一体を専らにす。誇多闘靡し、華にして不寔なるを許す毋かれ。其れ択言は務めて雅正を求め、尤も当に頌して規を忘れず、政事に於て裨用有るを期し、朕の返樸還淳、文体を釐正するの至意に副うべし、とあり。此れを欽めり。欽遵して部に到る。相い応に該衙門に行文して一体に遵照すれば可なるべし、等の因あり。本兼署部堂に到る。此れを准けたり。合に就ちに行知すべし。箚を備えて司に行し即便に移行し、一体に欽遵せしむ、等の因あり。此れを奉けたり。
又、恩を体例に籲む等の事の為にす。
嘉慶二十三年五月初四日、総督部堂董(教増)の、本司の詳に批するを奉けたるに、査得したるに、琉球国の接貢船内の官伴・水梢人等の帯来せる土産の貨物は、先に経に詳もて憲台の批を奉け、開館貿易を准さる。当即に福防同知に檄行し、遵照して稽察し趕緊に貿易するを厳催し、完竣すれば験明し、造冊して取結し、詳報せしめ去後れり。
茲に署福防同知言尚焜の詳報に拠るに、接貢船内に帯来せる土産の貨物并びに官伴の随帯せる銀両は、嘉慶二十二年十月二十日に開館貿易し、本年四月二十一日に至りて完竣す。即ちに四月二十七日に離駅登舟す。
所有の接貢船上の官伴・水梢は原報の共に八十九員名の内、水梢肥加・長嶺二名の病故するを除き、又、接貢の存留官伴六員名を除き、又、水梢玉城・小嶺二名は、連江県より送到せる漂風難夷泉崎村即ち宮多郎の船内に派撥し引導として遣回せるを除き、又、水梢仲村渠・高江洲二名は、浙江太平県より送到せる難夷鄷国桂の船内に派撥し引導として遣回せるを除くの外、前年進貢して京回せる官伴二十員名を附搭し、又、前年進貢せる存留官伴の跟伴屋麻城一名は報故するを除くの外、寔在の官伴一十五員名を附搭し、通共して回国する官伴・水梢は統計するに一百一十二員名なり。
現に夷官の呈報に拠るに、四月二十七日に定めて離馹登舟す。此の時、行期緊迫し、未だ稽遅して風汛を悞るを致すに便ならず。相い応に前年の例に体照し、先行に詳明して咨を請い、該庁に飭令して験明し、貨物の冊・結を備造し、司に送りて另文もて呈送して案に備えしむるを除くの外、合に拠送せる花名の数冊を将て情に拠りて詳請し、伏して察核して迅やかに即日に批示を賜るを候ち、以て給咨して該国王に備移し、汛に乗じて遣発回国するを査照するに便ならしむべし。該庁に行令し、閩安協と会同して験明し、員弁を派撥して護送出洋せしめ、長行回国の日期を取具し、另に詳もて題するを請う、等の由あり。
批を奉けたるに、詳の如く給咨し、該国王に備移し、汛に乗じて遣発回国するを査照せしめよ。并びに福防同知に行して閩安協と会同して験明し、員弁を派撥して護送出洋せしめよ。仍お長行回国の日期を取り具詳して題を請え。并びに撫部院の批示を候て。繳す。冊は存す、とあり。
又、巡撫部院史(致光)の批を奉けたるに、詳の如く給咨し、該国王に備移し、汛に乗じて遣発回国するを査照せしめよ。福防庁に行令し、閩安協と会同して員弁を派撥して護送出洋せしめよ。仍お船内の貨物を将て盤験して清楚ならしめ、造冊し呈送して察査せしめよ。難番仲村渠等の各起の船隻に至りては、既に均しく四月二十七日を択びて登舟す。何を以て、遅れて今日に至るも尚お未だ具詳せざるや。是れ庁胥の玩延するか、抑も司書の遅擱するに係るや否や。該夷人登舟するの後、一たび風汛に遇えば、応に即ちに放洋せしむべし。而も該司、尚お未だ詳報し給咨せざれば、豈に遅悞せざらんや。仰即ちに査明して具覆し、一面に迅速に例に照らして詳辦し、并びに長行回国の日期を取具し叙詳して題を請え。再び遅延する毋かれ。速速たれ。仍お督部堂の批示を候て。繳す。冊は存す、等の因あり。此れを奉けたり。并びに福防庁に拠りて送到せる貨物の冊・結は前来す。
茲に遣発回国の期に当たり、合に就ちに移知すべし。此れが為に貴国王に備咨す。請煩わくは査照施行せられよ。須らく咨に至るべき者なり。
計、移送せる冊一本あり
右、琉球国中山王尚(灝)に咨す
嘉慶二十三年(一八一八)五月初四日
注*本文書の咨覆は〔一二五-〇四〕である。
(1)福建等処承宣布政使司 明清時代の福建省の行政官庁。長官は布政使。省の財政・戸口・田土の調査、朝命の宣布や道・府以下の監督、駅伝等の一般行政を統括した。琉球国を対象とする市舶提挙司・柔遠駅が置かれていた福建省の布政司は、明清時代を通じて琉球国との外交の窓口であった。
(2)接回 受け取って帰る。引きつれて帰国する。
(3)貴国王の咨 〔一二二-〇一〕。
(4)案照 前の案件に照らし。(根拠とすべき)公文書によれば、の意。
(5)本爵 皇族・王族の自称。琉球国王の位は皇帝から与えられた王爵。
(6)貢典 朝貢についてのきまり。
(7)表章 皇帝に奉る表文や奏本で、朝貢国では表文は謝恩・慶賀・進貢などの際に用いられ、それ以外は奏本が用いられた。
(8)両院 総督と巡撫。総督は一省ないし数省の民政・軍務を掌る地方行政の最高官。巡撫は省の長官。「両院」の「院」は都察院のことで、総督・巡撫が都察院の職名を兼ね有することからいう。
(9)転詳 詳を上司へ取りついで報告すること。詳は上級官庁に報告して指示を受けるための文書。
(10)起送 出発する。
(11)聖禧 天子の幸福。
(12)叩祝 「叩」は叩頭の意。皇帝の御前でひざまずき、頭を地面にすりつける儀礼。礼を尽くして祝うという意味。
(13)魏崇仁 久米村系魏氏。高嶺里之子親雲上(『家譜(二)』一一頁、王朝銓の譜)。嘉慶二十二年接貢の在船都通事。『宝案』ではほかに嘉慶五年の王舅通事(巻九一)、嘉慶十四年護送船の都通事(巻一〇七)としても名がみえる。
(14)坐駕 坐は(すわって)乗る。駕は操縦する。
(15)欽賜 天子から賜う。恩賜。
(16)京回 都より帰る。ここでは北京から福州へ戻ること。
(17)王士惇 久米村系王氏。瀬名波親雲上。嘉慶二十一年進貢の都通事。『宝案』ではほかに嘉慶十一年の具結状に中議大夫(巻一〇一)、道光二年進貢の正議大夫(巻一三三)としても名がみえる。
(18)存留通事 進貢・接貢の際に使者に随行して中国に渡り、福建にとどまって福州琉球館における外交折衝・貿易業務等にあたる。
(19)鄭択中 神山親雲上(『家譜(二)』四四一頁、孫光裕の譜)。久米村系鄭氏。嘉慶二十一年進貢の存留通事。『宝案』ではほかに道光二年進貢の都通事(巻一三三)、八年進貢の朝京都通事(巻一四七)、十二年進貢の副使正議大夫(巻一五五)としても名がみえる。
(20)遠人 首都からはるかに離れた遠方の人々。地の果てに住む人々。世界中の遠い国の人々。ここでは琉球。
(21)懐柔 思いやり懐けること、帰順させること。「遠人を懐柔」は遠方の琉球を思いやって懐けること。『礼記』「中庸」に「凡そ天下・国家を為むるに、九経有り。曰く、身を修むるなり。賢を尊ぶなり。親を親しむるなり。大臣を敬するなり。群臣を体するなり。遠人を柔げ、諸侯を懐くるなり」とある。
(22)至意 誠意。まごころ。
(23)仰体 仰いでしっかり受け止めること。
(24)早汛 陰暦五月以前に吹く航海に適した季節風のこと。
(25)返棹 帰国する。
(26)驚濤の虞 驚濤は恐るべき荒波。荒波が激しくなる恐れ。
(27)咨達 咨文を送達する。
(28)察照 明察する。つまびらかに知る。明らかにする。
(29)等の因あり 引用文の終りを示す語。ふつうは上級または同級機関からの引用に用いる。
(30)此れを准けたり 「准此」は同等機関からの文書を受け取ったことを示す接受語。上記の文書を受け取りました、の意。
(31)檄 上級機関からの指令の文書。
(32)探護 探索して護送する。
(33)兼署巡撫部院 総督が福建巡撫を臨時に兼務していること。
(34)董(教増) ?~道光二年(一八二二)。字は益甫。諡は文恪。江蘇上元の人。乾隆四十五年、南巡の挙人(召試)。五十一年(丁未)の進士。嘉慶五年四川按察使となり、九年四川布政使となる。その後安徽巡撫、陜西巡撫、広東巡撫などを経て、二十二年閩浙総督となる(『清史稿』巻三五七、列伝一四四)。
(35)憲牌 上司の指令・通達文書。憲は上官への尊称。
(36)署閩安副将 福建水師提督下に閩安協があり、副将はその指揮官(『(光緒)清会典』巻四五)。署は代理。
(37)陳元標 福建の人。嘉慶二十年二月題補提標中軍参将となる。嘉慶二十二年の署閩安副将(『清代官員履歴檔案全編』)。
(38)督部堂 総督。ここでは董教増。この時期福建巡撫を兼務していた。
(39)憲檄 檄は上級機関からの指令の文書。ここでは福建巡撫董教増の指令、またはそれを記した文書。
(40)着令 命令する。
(41)本幫 幫は仲間、組織の意。ここでは署閩安副将陳元標の属する水軍か。
(42)督帯 監督して引率する。
(43)職 ここでは卑職の意。わたくし。
(44)標 総督直属の軍隊のこと。清代においては、総督・巡撫に直属する督標・撫標が設けられた。ここでは、閩浙総督直属の海軍のこと。
(45)汛弁 汛は緑営(漢人のみで編成し治安維持に当たる軍)の軍組織における最小の単位で、千総・把総等が率いる。弁は員弁、役人。ここでは緑営の官兵か。
(46)巡緝 巡察緝捕のことで、巡回して犯罪者を捕らえること。
(47)分飭 各関係部署に訓令を発することか。
(48)留心 注意すること、気をつけること。
(49)護左営都司 水師は閩安水師副将の下に左営都司・右営都司、左営遊撃・右営遊撃などの武官職がおかれた。都司は明代に初めて置かれ、清代においては正四品官の武職、副将のために営務を統轄した。護は護理の意か。護理は下級の官職の者が上級の職を代行すること。
(50)張啓明 嘉慶二十二年の護左営都司。
(51)署中軍守備 中軍営務処の守備。署は代理。清の軍制の武官で、水師は中営・左営・右営の三営に分かれ、遊撃・守備・千総・把総の順で武官職がおかれた。
(52)陳登貴 嘉慶二十二年の署中軍守備。
(53)亭頭汛 閩江県亭頭郷に置かれた緑営。通行する船の監督・取り締まりを行った。
(54)外委 定員外に任命した役人のこと。
(55)蔡長青 嘉慶二十二年の亭頭汛外委。
(56)蔡修 乾隆四十二~道光十二年(一七七七~一八三二)。儀間親雲上。久米村系蔡氏(儀間家)十六世。嘉慶五年通事、十三年都通事、道光二年中議大夫に陞る。嘉慶二年読書習礼のため閩に赴き、五年帰国。嘉慶二十二年接貢の存留通事、道光四年進貢二号貢船の大通事を務めた。嘉慶元年家統を継ぎ小禄間切儀間地頭職を授かる(『家譜(二)』二六九頁)。
(57)官伴 官員・人伴の略。官員は正使などの職務についている役人。人伴はその従者。
(58)水梢 水夫。船乗り。
(59)四嶼洋面 四つの島嶼群のことか。ここでは、媽祖列島、東沙島、白犬列島方面のことか。
(60)定海汛 福建省福州府の西部に位置している。現在の福建省福州市連江県に置かれた緑営の駐屯地。
(61)把総 清の武官。緑営の最小編成単位である哨の指揮官。
(62)陳忠義 嘉慶二十二年の定海汛把総。
(63)虎に進み 五虎門に進むこと。
(64)移交 引き渡すこと。引き継ぐこと。また引き渡された文書。
(65)接護 受け取って護送する。護送の任務を引き継ぐ。
(66)前来 送って来る。持って来る。到来する。
(67)兵目 兵の頭目。軍官。
(68)管帯 管理して随行することか。
(69)小心に 注意深く。慎重に。細心の注意を払って。
(70)亭頭怡山 亭頭は閩侯県亭頭郷。海防の要衝である閩安鎮近く、怡山院天妃宮のあった所。怡山院に到着すると進貢船は一旦そこで停泊し、閩安鎮の官吏の検査(会験)を受けた。
(71)江干 岸辺、川沿い。
(72)抛泊 いかりを下ろす。
(73)理として合に~べし 規定上当然…すべきである。
(74)具報 上級機関が下級機関に発した文書の中で、下級機関があることを実行したのち、文書の形式で、その結果を上級機関に報告すること。
(75)転報 とりついで報告する。
(76)飭行 命令を発する。命じて実行させる。
(77)目兵 兵目に同じか。兵卒中の小頭領か。
(78)牌を備え 牌は地方の上級機関から下級機関へ送る命令書。牌を作成して、の意。
(79)司に行し 司は布政使司。布政使司に送る。
(80)福防庁 福州府海防同知庁の略。福州府の下部機関で、沿岸の防備などを管轄した。その長は海防同知または海防通判で、府の長官である知府の指揮を受けた。
(81)転行 上司の命令を受け取って関係機関へ転送して通知する。
(82)査照 調べて承知する。うけとった文書の内容をよく検討して趣旨を了解し、それによって事務を処理することをあらわす語(「用語解説」参照)。
(83)内港 外洋とは隔てられた港内。
(84)帯進 つれすすむ。一緒に進む。
(85)営汛 営は緑営。汛は緑営の軍組織における最小の単位で、千総・把総等が率いる。
(86)験明 検査して明らかにする。会験明白の略か。
(87)館駅 福州にある琉球館を指す。正式には柔遠駅と言う。
(88)安頓 落ち着かせる。安挿と同じ。
(89)辦理 処理する(こと)。
(90)詳報 詳文で上級官庁に報告する。
(91)総督部堂 総督は複数省の民政・軍務を掌る地方行政の最高の長官(『清国行政法』第一巻下、三一~四〇頁参照)。部堂は、六部の侍郎をいい、堂は堂上官の略語。各省の総督にも尚書の銜(官位)を加えたので、部堂といった。
(92)詳 上級機関の指示を仰ぐため、下級機関から上級機関に報告する公文書の一種。「詳に批する」は、下級機関が送った報告文に上級機関が批(指示)を入れること。ここでは布政司からの文書に総督が指示をすること。
(93)査得 調査したところ、それによれば、の意。官庁の所属部局の主管の官が保存書類などの調査結果に基づいて問題の案件に関する自己の見解を上司に具申するとき、文章の冒頭に用いる。『宝案』では、題本・詳によくみられる。文末に「案に在り」とすることがある。
(94)率領 (隊伍や集団を)率いること。
(95)閩 福建省の別名。
(96)南台 福建省閩侯県の南九里にある釣台山のことで、島の北岸は貢船の停泊地であった。また閩江と南台島の間の中洲には閩海関が置かれていた。
(97)番船浦 閩江沿いにある外国船(番船)の停泊所。福州と南台を結ぶ大万寿橋の河口部にある中洲にあった。停泊所として番船浦が使用されるようになったのは嘉慶末以降からである。
(98)駛抵 航行して到る。
(99)福州府海防同知 福州府の下部機関で、沿岸の防備などを管轄した福州府海防同知庁の長官。
(100)言尚焜 江蘇鑲熟の人。挙人。嘉慶十三年閩県知県となる。嘉慶二十二年には署福防同知(『(同治)福建通志』巻一〇八)。
(101)福州城守営副将 閩、侯官、古田、屏南、閩清、永福の各区県を分守する緑営の長官(『清代地方官制考』参照)。
(102)安慶 直隷清苑の人。嘉慶十五年五月補福建北路営副将となり、嘉慶十八年福州城守営副将となる(『(同治)福建通志』巻一一九)。
(103)閩海関 福州城外の南台島におかれた税関。閩海関の管理は福州将軍が兼ねていた。福建では初め漳州に海関が設けられ、その後南台、厦門、泉州、涵江、安海、銅山、閩安鎮などに置かれ、五虎門から入ってくる船には閩安鎮で、福建から出ていく船には南台で納税させた(『清代地方官制考』参照)。
(104)希霖布 嘉慶二十二年の閩海関委員。『選編』では南台口税務驍騎校として名がみえる。驍騎校は清代の八旗の武官。
(105)会験 会同盤験の略。合同で検査する。立ち会って点検すること。
(106)安挿 落ち着かせる。配属する。
(107)造冊 帳簿や人名・貨物等のリストを作成すること。
(108)抄白 写しをとる。文章の写し。控え。
(109)符文 琉球国王が進貢使節に対して発給した証明書。通常の進貢使のほか、冊封謝恩使・慶賀登極使・先帝への進香使・官生など、北京へ赴く人員に対して交付された。
(110)執照 琉球国王が外国に出航する船ごとに発給した証明書。原則として一船につき一通を給付し、派遣の理由と目的地、使節・乗組員の氏名・人数、積載荷物と数量などを明記した。進貢の場合は頭号船と二号船それぞれに発給された。
(111)清冊 リスト。明細。目録。
(112)転造 他機関からの報告にもとづいて作成すること。
(113)詳送 詳文(下級機関から上級機関への公文書)と一緒に送付する。
(114)撫憲 巡撫。憲は憲台(地方に駐する高官の尊称で、総督・巡撫に対する呼称)。
(115)主稿 主稿官。主となって草案をつくること(『六部成語注解』)。
(116)合併声明 「声明」は言明する、公言して意志を明らかにすること。いくつかの事柄をあわせて言明する。
(117)等の由 引用文の文末におく語。下行文の引用に用いる。
(118)批 上級官庁が下級官庁から、または官庁が民間からうける報告・申請などに対し、(多くは書面で)何らかの決定・指示・回答を与えること。「批を奉けたるに」は、指示を受けたところ、(以下のような指示であった)の意。
(119)核題 調べて題奏する。
(120)仰候 仰いで指示を待つこと。「仰」は指示を求める、「候」は(意見を)うかがう、の意がある。
(121)繳す かえす、返還するの意。上級機関が下級機関からの文書に批(指示)をつけて返送する時、その批の末尾に用いる用語。
(122)冊 帳簿、帳面。物品リスト。
(123)史(致光) ?~道光八年(一八二八)。浙江山陰の人。乾隆五十二年の進士第一人。嘉慶十九年雲南按察使、貴州布政使を経て、嘉慶二十二年から二十四年まで福建巡撫を勤めた後、雲南巡撫を経て二十五年雲貴総督、道光三年都察院左都御史となる(故宮博物院図書文献館「伝稿」)。
(124)察核 取り調べること。文書などを詳細に調査すること。
(125)批示 批と同じ。下級機関から提出された文書に付記された上司の指示。ここでは総督部院の指示。
(126)抄照 執照の写し。「抄」は写すこと。
(127)存送 同一文書の写しの一部を当該機関で保存し、他の一部を関係部署へ送る、の意。
(128)恩を体例に籲む 体例はきまり、規範。規範化されている慣例に従って恩恵を賜ることを要請する、の意。
(129)接貢船 朝京の使節団を出迎えて帰国させる目的で派遣された船。琉球は十五世紀末から二年に一度朝貢することが定例となっていたが、十七世紀後半に到って進貢船が派遣されない年に進貢の使節を出迎えるという名目で、船が福州に派遣された。これを「接貢」と呼び、そのために派遣される船を「接貢船」と呼んだ。
(130)兌買 売買。兌は売り渡す、の意。
(131)史書 歴史の書物。史籍。
(132)黒黄紫皁大花西番蓮緞疋 黒・黄・紫・皁色の大きな花模様の刺繍を施した絹織物のことか。黒・黄は天地の色、紫は神仙・帝王の色、皁は黒で、朝服の色である。西番蓮はトケイソウ(時計草)。花弁が時計のように放射状に開いているところからいう。
(133)焰硝 火薬。硝石。
(134)牛角 牛の角。
(135)桐油 オオアブラギリの種子からとる油。乾隆年間には違禁貨物に数えられている(『選編』一一頁)。
(136)黄紅銅器 黄銅や紅銅の器。黄銅は銅と亜鉛の合金(真鍮)、紅銅(銅)は琉球の進貢品の一つでもあり、黄銅は精錬が難しく、いずれも貴重だった。
(137)糸綢 絹織物のこと。
(138)綾絹 あや織りの絹。あやぎぬ。
(139)紗羅 紗も羅もともに薄絹、または布面に隙間をもたせた透け感のある布のこと。
(140)例禁 条例・規則などに記されている禁止条項。禁令。
(141)収買 購入する。
(142)乾隆二十八年の間、諭旨 乾隆二十八年(一七五九)の諭旨。「准其歳買、土糸五千觔、二蚕湖糸三千觔、用示加恵外洋至意」とある(『(光緒)清会典事例』巻五一一)とある。
(143)土糸 手繰りの生糸。ここでは中国産を指す。
(144)二蚕湖糸 浙江省湖州で夏季に産する生糸。
(145)歳買 年間額を定めて購入すること。
(146)前憲 前任の総督・巡撫。ここでは乾隆三十年当時の福建巡撫李因培をさす。
(147)奏准 上奏して皇帝の裁可を得る(こと)。
(148)糸觔 生糸。
(149)綢緞 紬緞とも。綢(紬)も緞も絹織物。綢は紬、緞は厚みのあるものを言う。
(150)改配 一定の換算率で甲を乙に代える。ここでは生糸を絹織物に代えること。
(151)抵扣 あてて差し引く。換算して差し引くこと。
(152)扣除 差し引くこと。抹消する。ここでは冊に記した乗組員の名簿から名を抹消する。
(153)給示 指示を与えて。
(154)呈請 提出して要請すること。
(155)開館貿易 福州琉球館において琉球から持参した銀や積載品と中国産品を売買した公許の貿易。
(156)体恤 相手の身になって考えて行う、あわれむ。恩恵。
(157)憲行 上司の命令。
(158)遵奉 したがいまもる。遵守。
(159)看管の員役 監視の役人。
(160)厳飭 きびしく命じること。飭は命令すること。
(161)稽察 治安保護のため官兵を派遣して巡察させること。
(162)採買 購買。選んで買うこと。
(163)摺報 公文書で報告する。
(164)配搭 船に載せること。
(165)扣抵 抵扣に同じ。差し引いて充てる。
(166)氈条 毛氈。毛布。ベッドに敷く羊毛製の絨毯。
(167)買帯 購入し携帯する。
(168)把駅の員弁 琉球館の警備役人。
(169)陋規 賄賂。広義では、公人が公務について法律で定められた給与以外に受領する収入をさす。官吏が種々の名義を設けて不法に徴収する手数料。
(170)需索 不法な手段でねだる。強要する。
(171)土棍 土地の棍徒(無頼漢)。
(172)奸民 狡猾な人民。
(173)勾通 ぐるになる。結託する。結託・共謀する。
(174)局騙 巧妙に他人の財物を詐取する。
(175)禁物 交易を禁じられた物品。『(光緒)清会典事例』巻五一一、礼部の「朝貢、禁令一」に「凡外国貿易、不許収買史書、黒黄紫皁大花西番蓮緞、並一応違禁兵器、焔硝牛角等物」とある。
(176)串帯 ぐるになって持ち出す。
(177)額を逾えて 「額」は貿易が許可された定額(年間購入額)。定額を超えて。
(178)滋弊 弊害が生じること。問題を起こすこと。
(179)客商 ここでは琉球館付きの御用商人を指す。球商ともいう。
(180)細冊 明細書。
(181)彙造 一つにまとめる。
(182)査考 検証して調べる。
(183)訳諭 通訳して諭す。
(184)趕緊 急ぐこと。ただちに。
(185)報竣 終了を報告すること。
(186)詳請 詳文(下級機関から上級機関への公文書)で要請すること。ここでは布政使から総督へ公文書で要請すること。
(187)貽悞 手間取る。遅れる。
(188)盤験 関口・津渡を通行する者に対して、その身分・用向等を訊問し、荷物を検査すること。盤詰査験の略。
(189)透漏 手落ち、遺漏。
(190)柔遠駅 福州に設置された琉球使節の宿泊所。琉球館ともいう。
(191)寔貼 実貼。告示などを掲示すること。
(192)暁諭 はっきりと教えさとす。
(193)章程 程は法式。(規則などの)法式を記した文章。
(194)飭遵 命じて指示通りに実行させる。
(195)報査 調べて報告させること。調査して報告すること。
(196)竣報 終了したことを報告すること。
(197)通行 文章を送って通知する。
(198)王(紹蘭) 字は南陔。浙江蕭山の人。乾隆五十八年の進士。福建南屏知県、閩県知県、福建布政使などを経て、嘉慶十九年福建巡撫となるも二十二年汪志伊の罷免に伴い解職(『清史稿 三七』巻三五九、列伝一四六・故宮博物院図書文献館「伝包」)。
(199)箚付 訓令文。上級官庁から下級へ行移する文書であるが、上司がその所属の下級衙門に給することが多い。
(200)儀制司 礼部の四清吏司の一つ、儀制清吏司のこと。朝儀・冠服・宗室の婚礼・学校等の事務を分掌する。
(201)旬慶の大典 嘉慶帝の六十歳の誕生日を祝うめでたい儀式。旬は十日、あるいは十年をひとまとまりとしたもの。嘉慶帝は乾隆二十五年(一七六〇)生まれである。
(202)鑾輅 鑾和(天子の車に附ける鈴)の附いた車。天子の乗る馬車。
(203)時巡 皇帝が時を以て地方を巡視すること。周代、天子が十二年毎に春は東、夏は南、秋は西、冬は北を巡ったことからいう。
(204)臣工 群臣百官。工は官。
(205)呈献 贈呈する。献呈する。
(206)盛京 現在の遼寧省の省都瀋陽のこと。遼寧省は中国東北部に位置し、南西部は黄海と渤海に面し、南東部は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と接する。清朝の初代皇帝ヌルハチの時、遼陽の京城から瀋陽へ遷都して盛京と改称、北京遷都後も陪都として奉天府といい、行政長官として府尹を置くほか、別に奉天将軍を置いて軍事を統括させた。
(207)三陵 清の太祖ヌルハチ以前の祖先の墓である永陵、ヌルハチの墓である福陵、太宗ホンタイジの墓である昭陵をさして三陵と言う。
(208)周甲 満六十歳。還暦。
(209)雍容 やわらいだ姿。温和な容貌。
(210)揄揚 褒めそやす。
(211)天保頌君 天の保佑により皇帝の地位が安定し、安寧が続くようにと皇帝を褒め称えること。天保は『詩経』「小雅・鹿鳴之什・天保」に「天保定爾、亦孔之国」とある。また、「天保」の詩序には「天保は、下の上に報いる也。君能く下に下して以て其の政を成せば、臣能く美を帰して以て其の上に報ゆ」とある。頌は文体の一つで神明・人君などの盛徳をほめたたえるもの。
(212)下情 しもじもの様子、庶民の実情。
(213)盛典 盛大な式典。
(214)体裁 詩文の格式。体制(詩文の体裁)と剪裁(文章を練ること)。
(215)宗室 皇帝の一族。満洲王朝の創始者たる太祖ヌルハチの父・顕祖宣皇帝の直系子孫をいう。
(216)王公 諸侯。王(親王・郡王)、公(公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵)。
(217)満漢の大臣 満洲人・漢人の各大臣。
(218)京堂 京官(京師に在勤する官吏)のこと。
(219)翰詹科道 翰は翰林院、詹は詹事府、科は六科給事中、道は各道の御史をいう。
(220)科甲 科挙のこと。
(221)備進 準備をする。献上する準備をする。
(222)呈逓 差し出す。進呈する。
(223)廃員 官職を廃止された者。
(224)罷斥 罷免すること。
(225)越分妄干 分限をこえてみだりにおかすこと。
(226)僥倖 思いがけぬ幸せ。
(227)衙門 役所。公的機関。
(228)貪多務博 貪多は多くを貪る、欲を深くする。『韓愈』「進学解」に「貪多務得、細大不捐」とあり、本来は知識を多く得ようと務めることをいうが、後に物事に貪欲で多くを求め多くを得ようとすることをいう。「務博」は「務得」の誤りか。あるいは広く(多く)得ようと務めるの意か。
(229)繊巧新奇 繊巧は細かく巧み。精緻。新奇は新しく珍しい。「繊巧新奇為るを競う」は冗漫、過剰で奇を衒うことを競う、の意か。
(230)対揚 君命にこたえてその意を天下にあらわす。民に向って宣揚する。「人臣対揚の体に非ず」は、(近来進呈される冊は)皇帝の意を人臣に向かって宣揚する体をなしていない、との意か。
(231)頌賦 頌と賦。頌は人君の盛徳をほめて神に告げる祭りの詩。賦は比喩などを用いずありのままによむ詩の叙述法のこと。
(232)敦厚 情に厚い。篤実。誠実。
(233)誇多闘靡 自らその宏博なことをほこり、美をきそう。『韓愈』「送陳秀才序」に「読書以為学、纘言以為文、非以誇多而闘靡也」とある。
(234)択言 言葉を選ぶこと。
(235)雅正 みやびやかで正しい。
(236)裨用 役に立つ。為になる。
(237)返樸還淳 樸に返り淳に還る。樸・淳はすなお、飾り気がない。原始的で誠実であり質素で温厚な社会気風の回復。
(238)釐正 治め正す。あらためただすこと。改正。革正。
(239)行文 文書を送ること。
(240)遵照 指示に従う。
(241)箚を備え 箚は上級官庁から下級官庁へ送る公文書のこと。上司からの命令文書を付して、の意。
(242)移行 同等機関に移文を送って知らせること。
(243)憲台 皇帝に任命されて地方に駐する高官の尊称。下級官吏の上司に対する尊称。清代では総督・巡撫に対する呼称。ここでは閩浙総督のこと。
(244)檄行 指令を送る。檄は上級機関からの指令の文書。
(245)厳催 きびしく促すこと。
(246)完竣 完了する。おわる。
(247)取結 結(保証書)を作成すること。
(248)去後れり 「去後」はある事件が完了したことを示す用語。「~しおわれり」と読む場合と、「~せり、その後~」と読む場合がある(「用語解説」参照)。
(249)離駅登舟 駅(柔遠駅)を出て船に乗る、出航すること。
(250)原報 当初の報告。
(251)連江県 福州府連江県。台湾海峡に面し、県の南端は閩江の河口に接する。
(252)引導 水先案内。
(253)太平県 浙江省台州府に属する。浙江省東部沿海のほぼ中央、今は温嶺県と改める。
(254)附搭 搭載すること。
(255)跟伴 従者。
(256)報故 亡くなったことを報告する。
(257)寔在 実際に。実際の。
(258)通共 まとめて一緒に。合計。
(259)統計 集計する。
(260)呈報 呈文(下級機関から上級機関へ提出する文書)で報告する。またその文書。
(261)稽遅 遅延する。
(262)風汛 発船に適した季節風。ここでは琉球への航海に有利な初夏の季節風。
(263)体照 参照する。
(264)詳明 詳文で事情を説明する。
(265)飭令 命令する。命じてさせる。
(266)冊・結 細冊(明細書)または清冊(貨物・人名リスト)と甘結(証明書・保証書)。「冊」は主として帳簿の類をいい、「結」は積載した貨物の数量についての証明書をいう。
(267)備造 作成する。
(268)呈送 呈文を送る。
(269)案に備え 案(書類)を記録して。登録して。
(270)拠送 証拠として送ること。
(271)花名 登録人名。人名リスト。
(272)給咨 咨文を発給すること。
(273)備移 移文(移は同等機関に送る公文書)を準備して。
(274)汛に乗じて 汛は季節風のこと。ここでは季節風に乗っての意。
(275)行令 下級機関に文書で命令、指示すること(「用語解説」参照)。
(276)閩安協 閩安協副将のこと。閩安鎮に駐し、海防を担当した。
(277)長行回国の日期 長い航海をして帰国するための出発の日付。長行回国は港を離れ遠洋航海して帰国させることである。通常、福建の護送船が五虎門沖まで送り、出発したのを見届けて布政司に報告する。その間一ケ月以上かかることもあった。五虎門北の沖合までは福建の海上警備の海域であった。
(278)取具 受け取って保管する。
(279)題を請え 題は上奏文の一つ。上級の諸機関が公事の上奏に用いた文書(題本)をしたためて上奏するように、の意。
(280)冊は存す 冊(帳簿、物品リスト)を手元に保管、保存しておくこと。
(281)清楚 明らか。はっきりとしていること。
(282)察査 調査し明らかにする。
(283)庁胥 胥吏のこと。下級官吏。下役。
(284)玩延 延引する。怠慢。
(285)司書 書記。文書を作成する下級役人か。
(286)遅擱 擱は、中断する、遅延する、手間取る。(文書作成が)遅れている、の意か。
(287)放洋 海に出る。出航する。
(288)遅悞 遅れて予定の期日に間に合わない。
(289)査明 調査して明確にすること。
(290)具覆 文書で回答する。返事する。
(291)詳辦 詳しくわきまえ知る。
(292)叙詳 詳は上級官署に出し指示を仰ぐ公文。詳文を作成すること。
(293)速速たれ 速速、は上級より下級への文書の末尾に記し、その文書の内容の速やかな処理を命ずる語。
(294)移知 同等機関に公文書を送って知らせること。移会、移行も同じ。
(295)備咨 咨文を作成する。
(296)移送 移文と一緒に送付する。移文は同等の、統属関係にない機関の間で交換する文書(「用語解説」参照)。