2-181-11　琉球国中山王尚育より関係当局あて、道光二十五年の接貢船の福州行きの便宜を図られたき旨要請する執照（道光二十五《一八四五》、八、四）
琉球国中山王尚（育）、恭しく勅書を迎え併びに使臣を接回する事の為にす。
照らし得たるに、本爵、業に道光二十四年秋に於て耳目官の毛嘉栄・正議大夫の鄭元偉等を遣わし、表章・方物を齎捧し、天朝に入貢せしめ、業経に福建等処承宣布政使司に移咨し、起送して京に赴き叩きて聖禧を祝らしめて案に在り。
茲に国に還るの期に当たれば、例として応に船を撥して接回すべし。此れが為に特に都通事の王兆杜等を遣わし、梢役共に八十九員名を帯領せしめ、海船一隻に坐駕し、前みて福建に至り、恭しく皇上の勅書・欽賞の幣帛を迎え、併びに京より回るの使臣毛嘉栄・鄭元偉・王邦選を接り、閩に在るの存留通事の魏学賢等と与に国に還らしめんとす。
但だ、差わす所の員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に王府、礼字第二百八十七号半印勘合の執照一道を給発して存留通事の蔡如寿等に付し、収執して前去せしむ。凡所の関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して阻滞するを得る毋からしめよ。
須らく執照に至るべき者なり。
計開す。
在船都通事一員　王兆杜　人伴四名
在船使者二員　向礼／麻肇森　人伴八名
存留通事一員　蔡如寿　人伴六名
管船夥長・直庫二名　鄭啓庸　元開基
水梢共に六十五名
右の執照は存留通事蔡如寿等に付す。此れに准ぜられよ
道光二十五年（一八四五）八月初四日

注（1）阻留　通行を阻止して拘留する。
（2）蔡如寿　湖城里之子親雲上。この年の接貢船は九月に那覇を出航した後行方不明となっている（『家譜（二）』五一四頁、陳昭芳の譜参照）。
（3）向礼　道光二十五年接貢の使者。首里向氏。
（4）麻肇森　道光二十五年接貢の使者。首里麻氏。
（5）鄭啓庸　一八〇七年生まれ。久米村鄭氏（池宮城家）十七世。道光十三年若里之子に擢せられ、通事に陞る。同十九年著作文章副師となる。同二十五年接貢船総管となるが、この時の船は那覇出航後行方不明となる（『家譜（二）』五八九頁）。
（6）元開基　道光二十五年接貢の管船直庫。