2-89-11　世孫尚温の、冊封使迎接および接貢のため正議大夫梁煥等を派遣するむねの執照（嘉慶四《一七九九》、八、七）
琉球国中山王世孫尚（温）、冊封併びに勅書を恭迎し、及び使臣を接回する事の為にす。
照得するに、敝国、業に嘉慶三年秋に於て耳目官向国垣・正議大夫曾謨等を遣わし、表章・方物を齎捧して天朝に入貢し、兼ねて封襲を請う。経に敝国、〔福建等処承宣布政使司に〕移咨し〔起送して京に赴きて聖禧を叩祝し、併せて冊封を請うは、案に在り。
茲に欽差臨国し、使臣還国の期に当たれば、応該に船を撥して迎接すべし。此れが為に特に接封の正議大夫梁煥、都通事梁允功等を遣わし、接貢の定例の官梢、併びに接封の加増の跟役、共に一百五員名を帯領し、海船一隻に坐駕し、前みて福建に至りて天使を恭迎して敝国に按臨せしめ、併びに皇上の勅書・欽賜の物件を迎え、及び京回の使臣向国垣・曾謨・鄭章観を接り、在閩の存留通事毛廷器等と与に帰国せしむ。
但だ差する所の員役は、文憑無ければ、以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に王府、礼字第一百六十三号の半印勘合執〕照一道を〔給発し、〕存留通事金式枢等に付して収執して前去せしむ。凡所の関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行せしめ、留難して阻滞を得ること毋からしめよ。須らく執照に至るべき者なり。
計開
接封正議大夫一員　梁煥　　　　跟伴二十一名
在船都通事一員　　梁允功　　　跟伴四名
在船使者二員　向鳳鳴／翁応禎　跟伴八名
存留通事一員　　　金式枢　　　跟伴六名
管船夥長・直庫二名　　鄭世傑　楫利航
水梢共に五十九名
右の執照は存留通事金式枢等に付し、此れを准けしむ
嘉慶四年（一七九九）八月初七日

注＊校訂本は脱落あり。〔一〇二-一二〕〔八九-〇六〕を参照して〔　〕で補った。
（1）金式枢　一七四七～一八一九年（乾隆十二～嘉慶二十四）。久米系金氏（多嘉良家）十三世。嘉慶四年存留通事、二十一年進貢二号船の在船都通事として中国に渡る。嘉慶七年に中議大夫に陞る（『家譜（二）』一〇七頁）。
（2）翁応禎　首里系翁氏。『宝案』では嘉慶四年・九年の在船使者として名がみえる。
（3）鄭世傑　久米系鄭氏。上原里之子親雲上。帰国に際して、嘉慶四年に漂着した馬艦船の船頭として接貢船より派撥されて乗船、帰国したことが〔九一-三〇〕や家譜にみえる（『家譜（二）』曾謨の譜、四〇一頁）。