2-72-09　琉球国中山王尚穆の、乾隆五十年の接貢のため、存留通事蔡任徳等に付した執照（乾隆五十《一七八五》、十一、十）
琉球国中山王尚（穆）、恭しく勅書を迎え、併びに使臣を接回する事の為にす。
照らし得たるに、本爵、業に乾隆四十九年冬に於て貢使の耳目官向猷・正議大夫毛景裕等を遣わし、表章・方物を齎捧して天朝に入貢せしむ。本爵、福建等処承宣布政使司に移咨するを経て、起送して京に赴き、叩きて聖禧を祝らしめて案に在り。
茲に還国の期に当たれば、例として応に船を撥して接回すべし。此れが為に特に都通事蔡徳蘊等を遣わし、梢役共に九十員名を帯領して海船一隻に坐駕せしめ、前みて福建に至り、恭しく皇上の勅書併びに欽賞の幣帛を迎え、及た京より回る使臣の向猷・毛景裕・楊文元は閩に在るの存留通事蔡世彦等と与に還国せしめんとす。
但だ、差する所の員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に、王府の礼字第一百三十号半印勘合の執照一道を給発し、存留通事蔡任徳等に付し、収執して前去せしむ。凡そ遇う所の関津及び沿海の巡哨官軍は、験実して即便に放行し、留難して阻滞するを得る毋からしめよ。
須らく執照に至るべき者なり。
計開す
在船都通事一員　蔡徳蘊　跟伴四名
在船使者二員　麻向茂／向天祥　　跟伴八名
存留通事一員　　蔡任徳　跟伴六名
管船夥長・直庫二名　林鳳洲　平永安
水梢共に六十六名
右の執照は存留通事蔡任徳等に付し、此れを准けしむ
乾隆五十年（一七八五）十一月初十日　給す

注（1）蔡任徳　蔡任重のこと。雍正十～嘉慶元年（一七三二～九六）。久米村系蔡氏（仲井間家）十三世。宮城親雲上。後に島津重豪の名前の一字（「重」）を避諱し「蔡任徳」に改めた。乾隆三十四年遏達理座、三十六年都通事、五十六年中議大夫に陞る。乾隆二十一年に勤学として福州へ赴き、二十三年帰国。乾隆三十一年に真和志間切仲井真地頭職、三十五年に南風原間切宮城地頭職を授かる。乾隆五十年の接貢存留通事として中国へ赴いた（『家譜（二）』三三〇頁）。
（2）麻向茂　上里親雲上（『家譜（二）』三一五頁、蔡徳蘊の譜）。乾隆五十年の在船使者。
（3）向天祥　松田親雲上（『阮姓家譜　支流　小渡家』阮克秀の譜）。乾隆五十年の在船使者。『宝案』では乾隆五十八年の在船使者（巻八〇）としても名がみえる。
（4）林鳳洲　乾隆五十年の管船夥長。