2-66-14　琉球国中山王尚穆の、乾隆四十五年の進貢のため、都通事阮廷宝等に付した符文（乾隆四十五《一七八〇》、十一、六）
琉球国中山王尚（穆）、進貢の事の為にす。
照らし得たるに、本爵、世天朝の洪恩に沐し、会典に遵依して二年一貢し、欽遵して案に在り。
茲に乾隆四十五年の進貢の期に当たれば、特に耳目官向翼・正議大夫毛景昌・都通事阮廷宝等を遣わし、表章を齎捧し、梢役共に二百を過ぎざるの員名を率領し海船二隻に坐駕せしめ、煎熟硫黄一万二千六百觔・紅銅三千觔・煉熟白剛錫一千觔を装運して両船に分載す。一船の礼字第一百二十号には煎熟硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・煉熟白剛錫五百觔を装載し、一船の礼字第一百二十一号には煎熟硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・煉熟白剛錫五百觔を装載し、前みて福建等処承宣布政使司に至りて投納し、起送して京に赴き叩きて聖禧を祝らしめんとす。
所有の差去せる員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に、王府の礼字第一百十九号半印勘合の符文一道を給発し、都通事阮廷宝等に附し、収執して前去せしむ。如し経過の関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して遅悞するを得る毋からしめよ。
須らく符文に至るべき者なり。
計開す
正使耳目官一員　　向翼　　　　　人伴一十二名
副使正議大夫一員　毛景昌　　　　人伴一十二名
朝京都通事一員　阮廷宝　　　　人伴七名
在船都通事二員　魏開功／毛景裕　　　　　人伴八名
在船使者四員　毛世隆　東初旭／馬徳嘉　召後祥　人伴一十二名
存留通事一員　　陳天龍　　　　　人伴六名
在船通事一員　　金堅　　　　　　人伴四名
管船火長・直庫四名　梁淵　慶永保／魏用楫　慶得安
水梢共に一百一十九名
右の符文は都通事阮廷宝等に付し、此れを准けしむ
乾隆四十五年（一七八〇）十一月初六日　給す

注（1）東初旭　乾隆四十五年の在船使者。『宝案』では乾隆四十八年の在船使者（巻六九）としても名がみえる。
（2）馬徳嘉　和宇慶親雲上（『魏姓家譜　小宗　高嶺家』、魏用楫の譜）。乾隆四十五年の在船使者。
（3）召後祥　乾隆四十五年の在船使者。
（4）梁淵　乾隆十～嘉慶二十四年（一七四五～一八一九）。久米村系梁氏（古謝家）十三世。古謝親雲上。乾隆四十七年当座、嘉慶十一年中議大夫、二十年正議大夫、二十二年申口座に陞る。乾隆三十三年に勤学として福州へ赴き、翌年帰国。乾隆四十五年総官、五十年に再び勤学として福州へ赴き、中華歌楽・雑戯などを学び五十三年に帰国。嘉慶十一年の頭号船大通事、嘉慶十八年の接貢大通事として中国へ渡る。嘉慶二十年に美里間切古謝地頭職を授かる（『家譜（二）』八一六頁）。
（5）慶永保　乾隆四十五年の管船直庫。
（6）魏用楫　雍正十二～嘉慶十五年（一七三四～一八一〇）。久米村系魏氏（高嶺家）七世。乾隆四十六年遏達理官、嘉慶二年都通事に陞る。乾隆四十五年の進貢二号船総管として中国へ赴いた（『魏姓家譜　小宗　高嶺家』）。