2-63-09　琉球国中山王尚穆の、乾隆四十二年の接貢のため、存留通事林維新等に付した執照（乾隆四十二《一七七七》、十一、二）
琉球国中山王尚（穆）、恭しく勅書を迎え、併びに使臣を接回する事の為にす。
照らし得たるに、本爵、業に乾隆四十一年冬に於て貢使の耳目官翁宏基・正議大夫鄭鴻勲等を遣わし、表章・方物を齎捧して天朝に入貢せしむ。本爵、福建等処承宣布政使司に移咨するを経て、起送して京に赴き叩きて聖禧を祝らしめて案に在り。
茲に還国の期に当たれば、例として応に船を撥して接回すべし。此れが為に特に都通事程容光等を遣わし、梢役共に九十一員名を帯領して海船一隻に坐駕せしめ、前みて福建に至り、恭しく皇上の勅書併びに欽賞の幣帛を迎え、及た京より回る使臣の翁宏基・鄭鴻勲・金策は閩に在るの存留通事鄭永功等と与に国に還らしめんとす。
但だ、差する所の員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に王府の礼字第一百十三号半印勘合の執照一道を給発し、存留通事林維新等に付し、収執して前去せしむ。凡そ遇う所の関津及び沿海の巡哨官軍の験実したれば、即便に放行し、留難して阻滞するを得る毋からしめよ。
須らく執照に至るべき者なり。
計開す
在船都通事一員　程容光　跟伴四名
在船使者二員　向永康／毛世隆　跟伴八名
存留通事一員　　林維新　跟伴六名
管船夥長・直庫二名　梁允功　仲達道
水梢共に六十七名
右の執照は存留通事林維新等に付し、此れを准けしむ
乾隆四十二年（一七七七）十一月初二日　給す

注（1）向永康　源河里之子親雲上朝泰（『家譜（二）』五六一頁、程容光の譜）。乾隆四十二年の在船使者。
（2）毛世隆　康煕五十五～乾隆四十六年（一七一六～八一）。首里系毛氏（平安名家）七世。平安名親雲上栄幸。乾隆三十一年当座敷、三十二年座敷に陞る。乾隆十五年に勝連間切平安名地頭職を授かる。給地中取、琉倉役などを経て乾隆四十二年の接貢船官舎、乾隆四十五年の進貢才府として中国へ赴き、同年に福州で没した（『毛姓家譜　大宗　平安名家』）。
（3）梁允功　久米村系梁氏。外間通事親雲上、のちに安慶名親雲上。『宝案』では乾隆五十七年（巻七九）、嘉慶四年の在船都通事（巻八九）、嘉慶五年の都通事（巻九一）、八年の正議大夫（巻九六）としても名がみえる。また嘉慶三年（一七九八）の結状では長史とある（巻八八）。
（4）仲達道　乾隆四十二年の管船直庫。『宝案』では乾隆四十四年、四十六年の管船直庫（巻六五・六七）としても名がみえる。