2-58-05　琉球国中山王尚穆の、乾隆三十八年の接貢のため、存留通事阮承祐等に付した執照（乾隆三十八《一七七三》、十一、十一）
琉球国中山王尚（穆）、恭しく勅書を迎え、併びに使臣を接回する事の為にす。
照らし得たるに、本爵、業に乾隆三十七年冬に於て貢使の耳目官向宣謨・正議大夫毛景成等を遣わし、表章・方物を齎捧して天朝に入貢せしむ。本爵、福建等処承宣布政使司に移咨するを経て、起送して京に赴かしめ、叩きて聖禧を祝らしめて案に在り。
茲に還国の期に当たれば、例として応に船を撥して接回すべし。此れが為に特に都通事梁国琬等を遣わし、梢役共に八十九員名を帯領して海船一隻に坐駕せしめ、前みて福建に至り、恭しく皇上の勅書併びに欽賞の幣帛を迎え、及た京より回る使臣の向宣謨・毛景成・蔡煕は閩に在りて存留する王三徳等と与に還国せしめんとす。
但だ、差する所の員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に、王府の礼字第一百五号半印勘合の執照一道を給発し、存留通事阮承祐等に付し、収執して前去せしむ。凡そ遇う所の関津及び沿海の巡哨官軍は、験実して即便に放行し、留難して阻滞するを得る毋からしめよ。
須らく執照に至るべき者なり。
計開す
在船都通事一員　梁国琬　跟伴四名
在船使者二員　毛思温／武成功　跟伴八名
存留通事一員　　阮承祐　跟伴六名
管船夥長・直庫二名　毛致知　宮能安
水梢共に六十五名
右の執照は存留通事阮承祐等に付し、此れを准けしむ
乾隆三十八年（一七七三）十一月十一日　給す

注（1）阮承祐　汀間親雲上（『家譜（二）』九二六頁、林日新の譜）。乾隆三十八年の存留通事。
（2）毛思温　田名親雲上盛憲（『家譜（二）』二一九頁、鄭作霖の譜）。乾隆三十八年の在船使者。『宝案』では乾隆四十年の在船使者（巻六〇）としても名がみえる。
（3）武成功　乾隆三十八年の在船使者。
（4）毛致知　乾隆元～嘉慶七年（一七三六～一八〇二）。久米村系毛氏六世。乾隆四十年当座敷、四十三年都通事に陞る。乾隆三十八年の総官として中国へ赴いた（『毛姓家譜　四世奥間里之子親雲上』）。
（5）宮能安　乾隆三十八年の管船直庫。『宝案』では乾隆四十年の管船直庫としても名がみえる（巻六〇）。