2-51-06　琉球国中山王尚穆の、乾隆三十二年の接貢のため、存留通事蔡世昌等に付した執照（乾隆三十二《一七六七》、十二、七）
琉球国中山王尚（穆）、恭しく勅書を迎え、併びに使臣を接回する事の為にす。
照らし得たるに、乾隆三十一年冬、業に貢使の耳目官阿必振・正議大夫阮大鼎等を遣わし、表章・方物を齎捧して天朝に入貢せしむ。本爵、福建等処承宣布政使司に移咨するを経て、起送して京に赴き、叩きて聖禧を祝らしめて案に在り。
茲に還国の期に当たれば、例として応に船を撥して接回すべし。此れが為に特に都通事毛廷秀等を遣わし、梢役共に八十二員名を帯領して海船一隻に坐駕せしめ、前みて福建に至り、恭しく皇上の勅書併びに欽賞の幣帛を迎え、及た京より回る使臣の阿必振・阮大鼎・魏献蘭は閩に在りて存留する鄭維興等と与に還国せしめんとす。
但だ、差する所の員役は、文憑無ければ以て各処の官軍の阻留して便ならざるを致すを恐る。此れが為に、王府の礼字第九十三号半印勘合の執照一道を給発して存留通事蔡世昌等に付し、収執して前去せしむ。凡そ遇う所の関津及び沿海の巡哨官軍は、験実して即便に放行し、留難して阻滞するを得る毋からしめよ。
須らく執照に至るべき者なり。
計開す
在船都通事一員　毛廷秀　　跟伴四名
在船使者二員　呂居温／向雄傑　　跟伴八名
存留通事一員　　蔡世昌　　跟伴六名
管船夥長・直庫二名　林有椿　馬長譲
水梢共に五十八名
右の執照は存留通事蔡世昌等に付し、此れを准けしむ
乾隆三十二年（一七六七）十二月初七日　給す

注（1）蔡世昌　？～嘉慶三年（一七九八）。久米村系蔡氏（宇栄原家）十三世。乾隆三十二年の存留通事。官は紫金大夫に陞る。乾隆二十三年官生として渡唐し、二年後国子監入学。二十七年帰国。三十五年に朝京都通事、四十七年に正議大夫として中国に赴く。嘉慶二年に国王尚温の国師となる（池宮正治・小渡清孝・田名真之編『久米村―歴史と人物―』ひるぎ社、一九九三年、二〇七頁）。
（2）呂居温　濱川親雲上（『毛姓家譜　四世奥間里之子親雲上』、毛廷秀の譜）。乾隆三十二年の在船使者。
（3）向雄傑　乾隆三十二年の在船使者。
（4）林有椿　新垣通事親雲上（『家譜（二）』五九七頁、鄭国楫の譜）。乾隆三十二年の管船夥長。
（5）馬長譲　乾隆三十二年の管船直庫。乾隆二十八年（巻四六）、
三十年（巻四九）の管船直庫である馬長謀と同一人物か。