2-36-17　世子尚穆の、進貢、請封のため耳目官毛元翼等を遣わすむねの符文（乾隆十九《一七五四》、十、二十二）
琉球国中山王世子尚（穆）、進貢、請封の事の為にす。
照得するに、敝国は世々天朝の洪恩に沐し、貢典に遵依して二年一次なること欽遵して、案に在り。
査するに、乾隆十九年は仍お進貢の期に当たれば、特に耳目官毛元翼・正議大夫蔡宏謨・都通事蔡功煕等を遣わし、表咨を齎捧して、海船二隻に坐駕し、官伴・水梢共に二百を過ぎざるの員名を率領し、常貢の煎熟硫黄一万二千六百觔・紅銅三千觔・煉熟白剛錫一千觔を装運し、両船に分載す。一船は礼字第六十六号、煎熟硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・煉熟白剛錫五百觔を装載し、一船は礼字第六十七号、煎熟硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・煉熟白剛錫五百觔を装載し、前みて福建等処承宣布政使司に至りて投納し、起送して京に赴き、聖禧を叩祝せんとす。所拠の差去せる員役は、文憑無ければ、各処の官軍の阻留して便ならざらんことを恐る。此れが為に理として合に符文を給発し、以て通行に便ならしむべし。
今、王府、礼字第六十五号の半印勘合の符文を給し、都通事蔡功煕等に付して収執して前去せしむ。如し経過の関津及び沿海の巡哨の官軍の験実に遇えば、即便に放行して留難して遅悞するを得る毋かれ。須らく符文に至るべき者なり。
計開　京に赴く
正使耳目官一員　　毛元翼 　人伴一十二名
副使正議大夫一員　蔡宏謨 　人伴一十二名
都通事一員　　　　蔡功煕 　人伴七名
在船都通事二員　　金宏／鄭士縄 　人伴八名
在船使者四員　　　毛宏休　毛開烈／葉嘉慶　阿応楨 　人伴一十六名
存留通事一員　　　楊文彬　　　　 　人伴六名
在船通事一員　　　紅秉毅　　　　 　人伴四名
管船火長・直庫四名　　林邦法　安広志／蔡永思　和承烈
水梢共に一百二十名
右の符文は、都通事蔡功煕等に付し、此れを准ず
乾隆十九年十月二十二日　給す

注（１）阿応楨　阿応禎とも記す。『宝案』では乾隆二十九年にも在船使者として名がみえる。
（２）楊文彬　名嘉地親雲上。乾隆二十一年進貢のとき、二号船の存留通事となる。翌年、接封船が琉球からこないうちに冊封使が出発することになり、接貢の都通事鄭秉和照屋親雲上が署理接封大夫となり、楊文彬は二号宝船に配座されて帰国した（蔡功煕の譜、『家譜（二）』三一三頁）。
（３）紅秉毅　伊差川通事親雲上（蔡徳蘊の譜、『家譜（二）』三一六頁）。『宝案』では乾隆二十八年の都通事として名がみえる。また『球陽』に乾隆二十五年、紅秉毅が福建で時憲書の撰日の式を学んだとの記事がみえる。
（４）林邦法　康煕五十九～乾隆二十九（一七二〇～六四）。乾隆十四年通事に陞る。十七年に通書役相附、二十一年には漏刻御番役を勤める（『家譜（二）』八九〇頁）。