2-22-23　国王尚敬の、進貢のため都通事林永隆等に付した符文（乾隆三《一七三八》、十一、八）
琉球国中山王尚（敬）、進貢の事の為にす。
照得するに、敝国、世々天朝の洪恩に沐し、貢典に遵依して二年一次すること、欽遵して案に在り。査するに、乾隆三年は乃ち進貢の期に当たれば、特に耳目官向維豪・正議大夫蔡墉・都通事林永隆等を遣わし、表咨を齎捧し、海船二隻に坐駕し、官伴・水梢共に二百員名を過ぎざるを率領し、常貢の煎熟硫黄一万二千六百觔・紅銅三千觔・煉熟白剛錫一千觔を装運し、両船に分載す。一船は礼字第三十三号、煎熟硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・煉熟白剛錫五百觔を装載す。一船は礼字第三十四号、煎熟硫黄六千三百觔・紅銅一千五百觔・煉熟白剛錫五百觔を装載す。前みて福建等処承宣布政使司に至りて投納し、起送して京に赴き、聖禧を叩祝せんとす。
所拠の差去せる員役は、文憑無ければ、各処の官軍の阻留して便ならざるを恐る。此れが為に理として合に符文を給発し、以て通行に便ならしむべし。今、王府、礼字第三十二号の半印勘合符文を給し、都通事林永隆等に付して収執して前去せしむ。如し経過の関津及び沿海の巡哨官軍の験実に遇えば、即便に放行し、留難して遅悞するを得る毋かれ。須らく符文に至るべき者なり。
計開す、京に赴く
正使耳目官一員　　向維豪　　　　人伴一十二名
副使正議大夫一員　蔡墉　　　　　人伴一十二名
都通事一員　　　　林永隆　　　　人伴七名
在船都通事二員　　梁珍／阮為標　　　　　人伴八名
在船使者四員　　　東景仁　益広業／麻世忠　毛洪勲　人伴一十六名
存留通事一員　　　阮大鼎　　　　人伴六名
在船通事一員　　　金鑑　　　　　人伴四名
管船火長・直庫四名　孫有執　馬利渉／毛廷憲　仲承烈
右の符文は都通事林永隆等に付し、此れを准ず
乾隆三年（一七三八）十一月初八日

注（1）三十二　校訂本は「參拾參」だが、次の執照が三十三・三十四号なので、符文は三十二号か。
（2）益広業　乾隆三年の在船使者。
（3）麻世忠　康煕二十七～乾隆三十六年（一六八九～一七七一）。首里系麻氏十一世（西原家）。渡慶次親方真本。康熙五十八年の接貢の在船使者（脇筆者）、雍正二年の進貢の在船使者（大筆者）、乾隆三年の在船使者（才府）となる。二十七年に寺社奉行、三十年に勘定奉行などを務めた（『家譜（三）』六二九頁）。
（4）毛洪勲　天願里之子親雲上栄政。乾隆三年の在船使者（官舎）（『家譜（三）』六三一頁、麻世忠の譜）。
（5）阮大鼎　？～乾隆三十三年（一七六八）。久米村系阮氏五世（宜保家）。宜保親雲上（『家譜（二）』三一四頁、蔡功煕の譜）。乾隆三年の存留通事。『宝案』では乾隆十四年に接貢の都通事（巻三一）、三十一年に進貢の正議大夫（巻五〇）として名がみえる。三十三年北京から戻る途中、山東徳州で病故した（巻七四）。
（6）金鑑　康煕三十二～乾隆十五年（一六九三～一七五〇）。久米村系金氏十一世（松長家）。手登根里之子親雲上。康煕五十七年に進貢船の管船夥長（総管）となる。五十九年には読書習礼のために福建に赴く。乾隆三年に進貢船の在船通事、十一年に在船都通事となる（『家譜（二）』一一六頁）。
（7）孫有執　康煕四十五～乾隆十五年（一七〇六～五〇）。久米村系孫氏四世（大嶺家）。乾隆三年に管船夥長（総管）、乾隆七年に読書習礼のために福建に渡っている（『家譜（二）』四三七頁）。
（8）毛廷憲　乾隆三年の管船火長。『宝案』「督抄宝案記」では奥間秀才として名がみえる。
（9）仲承烈　乾隆三・五年の管船直庫。